大学生対象HLWワークショップ開催 「目をそらしてきた問題考えるきっかけに」

2015年6月16日

HLWワークショップ情報提供_5599 NPO法人環境教育支援ネットワークきづきが主催するワークショップ「考えてみませんか高レベル放射性廃棄物のこと」が6月14日、埼玉県内で開催された。十文字学園女子大学と原産協会の共催で、新座市役所が後援。主に埼玉県近隣の大学生が参加し、高レベル放射性廃棄物(HLW)の現状について情報提供を受けたあと、4つのグループに分かれてディスカッションを行い、話し合った結果をそれぞれ発表した。
HLWワークショップ作業中_5648 赤坂秀成原産協会地域交流部マネージャーは、HLWをガラス固化体にして貯蔵している日本の現状を報告。貯蔵は完成された技術だが人間の管理が不可欠であることや、放射性物質の寿命を短縮または放射線を出さない核種に変換させる核種変換技術などが研究されているが実用化まで至ってないことなども紹介した。また、日本ではサイト選定が進んでいないが、社会経済的状況変化に応じた柔軟な処分方法へと議論されてきていることや、将来世代を配慮した取り組みを進めてきたスウェーデンやフランスなどの海外の事例などにも触れた。
 その後のディスカッションでは、各テーブルのファシリテーターとともに学生たちが疑問点や意見を出し合いながら、それぞれ好きな色のペンを使ってカラフルな模造紙や付箋にアイディアを積極的に書き込んでいく姿が見られた。最後にまとめられた意見について、各グループが発表した。

(グループ1)震災後の世代のほうが自分の頃よりも原子力の授業が取り入れられて詳しくなってきている例があり、子どもたちが学んだことを家庭へフィードバックしていくのが大切だとの意見があった。原子力発電や地層処分には、絶対安全だという白でもなく絶対危険だという黒でもないグレーの部分があり、両面を知らないことによる恐怖心が受け入れをはばむことにつながるので、情報を正しく理解する力が大事だと話し合った。また、日本に住む外国人にも、日本の地層処分の考え方について伝えられるようになるべきだと考えた。
(グループ2)原子力発電や地層処分の問題については自分で勉強しても難しいことが多く、テレビや教育の場でわかりやすく現状を知る機会がもっとあれば国民の理解向上につながるのではと考えた。日本は火山や地震の多い国だが、東海村と六ヶ所村だけでなく日本の広い地域で分散化して貯蔵し、環境影響評価を比べていくことも一案として出された。また、貯蔵には人間の管理が不可欠とされているが、ロボットに管理を委ねていく方法も挙げられた。
(グループ3)HLW処分には、管理面や場所選定、コスト面や技術面などのさまざまな問題があるが、まずは技術的にガラス固化体が安全であると国民から信用を得ることが第一歩だとし、理解を深めるための教育の必要性が話し合われた。情報は流していても情報を受け止める人が関係ないと思ってしまえばそこで止まってしまうことから、国民に浸透しているとは言えないHLW処分に関して自分のこととして危機感を高め、消費はしたけれども後始末はしないという問題であるという意識を共有し合うことが大切だ。
(グループ4)HLW処分の選択肢については、まずはすぐに取り出せるかたちの地層処分として、より良い技術の開発を待つ方法が最良だと話し合った。一方で取り出し可能にすることに伴うリスクや、地層処分を始めた後に何か問題が発生した場合に変更できるサイトの必要があるのではと懸念された。HLW処分を身近な問題として考えてもらうなら、教育の場に取り入れることが一番有効なのではと議論した。最近でもSNS(ソーシャルネットワーク)でのいじめの問題が発生したら、学校で正しい利用法などを教えるようになってきている。ただしそれには教える側も学んでいかなければならない。HLW処分に関するゲームやアプリを教材として取り入れるなどの工夫で学ぶきっかけを作っていくのも一案だ。

 ワークショップを終え、参加した学生からは、「他の人の考えを聴くことで自分の考えも広がった」、「もっと知りたいという思いになった」、「まずは知ることが高レベル放射性廃棄物について考えるスタートラインに立つことで、今日がその日となった」、「知ろうとしなかったことから目をそらし続けてきたという問題に向き合うことが出来た」など、今後も主体的に考えていこうとする感想が多くあった。HLWワークショップ発表_5664
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