女性ホルモンと放射線の相互作用 がん幹細胞生成を誘導 放医研

2015年6月18日

真:ホルモンと放射線の相互作用想定図ⓒ放医研

ホルモンと放射線の相互作用想定図ⓒ放医研

 放射線医学総合研究所(放医研)放射線防護研究センターのG.バレス研究員らはこのほど、乳がんの発生、浸潤、転移に関わる過程において女性ホルモンと放射線が相互作用するしくみを明らかにしたと発表した。
 がん治療等のために胸部の放射線照射を受けた女性は、30代ほどの若年齢で乳がんを発症するリスクが高く、放射線による乳がんの誘発には女性ホルモンが関与することが知られてきた。放医研ではこれまでの研究で、ヒト乳腺上皮系細胞株(MCF10A細胞)を使い、女性ホルモンと放射線が相互作用すると乳がんの起源となるがん幹細胞の生成が誘導されることを明らかにしていた。
 今回の実験では、MCF10A細胞を女性ホルモンの一種「プロゲステロン」と放射線にさらし、がん幹細胞の誘導のしくみを調べた。その結果、膜レセプターを介したプロゲステロンのシグナルと、放射線により誘導された何らかの細胞情報伝達経路とが協調して細胞内酵素の一種「PI3K」を活性化すると、「miR-29」というマイクロRNAの機能が抑制されて、がん幹細胞の生成が誘導されることを発見した。
 今回の発見は、がん幹細胞の生成を抑えてより安全な放射線治療を提供するために重要であり、今後のさらなる研究により、重粒子線治療を始めとした乳がん放射線治療の安全性や効率的な利用につなげることが期待される。