原子力損害報告が閣議決定
政府は6月19日、福島第一、第二原子力発電所事故に伴う損害に関する報告書を閣議決定した。原子力損害賠償法に基づき国会への提出が求められるもので、2015年5月29日時点の原子力損害の状況、政府のとった措置、賠償の進捗状況について取りまとめている。
原子力損害については、事故発生以降設定された警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域の政府指示により、「多数の住民が避難を余儀なくされ、避難指示等の対象区域の住民の生活はもとより、これら区域における経済社会活動にも大きな影響が生じている」と述べている。また、商品・サービスの買い控えといった風評被害については、福島県にとどまらず、広範囲に及び、農林漁業、食品産業、観光業、製造業、サービス業では影響が大きく、輸出や外国人観光客の減少など、海外との関係悪化にもつながっているとしている。
原子力損害賠償については、文部科学省に置かれた「原子力損害賠償紛争審査会」による指針策定や、「原子力損害賠償紛争解決センター」による和解仲介の経緯を述べている。原賠法に規定する補償契約に基づき政府が東京電力に支払った補償金は福島第一で1,200億円、福島第二で689億円、また、政府援助の枠組みとして設立された原子力損害賠償・廃炉等支援機構で、9兆円の国債交付を財源とした特別資金援助を行っていることなど、政府による賠償措置について説明している。