原賠制度専門部会 事故対応を一律に定めることには慎重論も

2015年7月8日

DSCF4628 原子力委員会が原子力損害賠償制度検討のために設置した「原子力損害賠償制度専門部会」の第二回会合が7月8日、都内で開催された。
 事務局から原子力損害賠償法が適用された事例として、1999年のJCOウラン加工工場臨界事故と2011年の福島第一原子力発電所事故について紹介された。また、福島第一原子力発電所事故による原子力損害範囲の判定等に関する指針の策定や免責規定を定めた原子力損害賠償法第3条第1項のただし書についても説明された。
 続いて鈴木正晃福島県副知事から、福島第一原子力発電所事故による損害に対する福島県の対応について説明があった。2011年4月26日に東京電力が仮払いを開始したが、着の身着のまま避難してきた当事者にとって、事故当初から約1か月半のここまでの期間は長く感じたとして、迅速な初動対応を望むとした。福島県からの国に対する要望として、賠償の対象となる損害の範囲を具体的にかつ明瞭に「指針」として示すこと、住民や地域に大きな混乱を生じさせないことを基本として被害の実態に見合った賠償が公平かつ迅速になされるようにすること、賠償だけでなく各種支援策を確実に実施し、原子力政策を国策として推進してきた責任を最後まで果たすことを挙げた。東京電力に対しては、原子力災害の原因となった責任を最後まで果たし、指針は賠償範囲の最小限の基準であるとの認識の下、被害の実態に見合った十分な賠償を確実かつ迅速に行うこと、被害者の心情にも配慮し誠実に対応することを求めた。
 遠藤典子委員(慶応義塾大学大学院特任教授)は、「民間で原子力事業を継続する前提なら有限責任性を確保していくべきで、情緒的な表現のただし書きを科学的な基準に則って定義し、原子力事業者の信用度をはかれるようにしなければならない」と主張した。一方で高橋滋委員(一橋大学大学院教授)は、「事故は一つ一つが全く違い、予想ができないかたちで起こるものなので、事業者のあり方を恒久法で決めきってしまうのは危険な場合があり、慎重に考えなければならない」との考えを述べた。オブザーバーの馬場利彦全国農業協同組合中央会参事は、「被災者の立場としては、まだ賠償が終わっておらず、総括がされてない」ことが気になる点だと述べた。
 次回の部会では、原子力損害賠償紛争解決センターおよび原子力損害賠償・廃炉等支援機構についての説明が行われ、日本商工会議所、全国農業協同組合中央会、全国漁業協同組合連合会などのオブザーバーから福島第一原子力発電所事故による損害の対応について聞くことを予定している。