ITERの超伝導トロイダルコイルに要求される電気絶縁用積層テープを開発

2015年8月19日

 日本原子力研究開発機構は8月18日、ITER(国際熱核融合実験炉)での超伝導トロイダル磁場コイルに用いる従来比で10倍以上の耐放射線性を有する電気絶縁用積層テープの開発に世界で初めて成功したと発表した。
 ITERの主要機器の一つであるトロイダル磁場コイルは、高温のプラズマを閉じ込めるための強力な磁場を発生させるもので、20年間の運転期間に照射される放射線(1,000万グレイ)の環境において、要求される電圧(19,000ボルト)に耐える電気絶縁が必要となるが、このほど産業構造材料メーカーの有沢製作所との協力で、この要求に応える超伝導コイル電気絶縁用積層テープを開発した。
 トロイダル磁場コイルの電気絶縁層は、高電圧に耐える絶縁バリアとガラス繊維を接着させた積層テープを超伝導導体に巻き付け、毛細管現象を利用して、真空でガラス繊維層に樹脂を浸透させた後(真空含浸)、熱を加えて樹脂を硬化させて製作する。真空含浸に用いられる樹脂は、大型コイルに十分浸透させる必要から、粘度が低く、高い耐放射線性を有することが求められ、また、硬化温度が高いと電気絶縁層に熱による歪みが加わることから、より低い温度で硬化できることも求められる。そのため、低い硬化温度と高い耐放射線性を両立し、粘度を最適化した接着剤用の樹脂を開発した。
 さらに、ITERのトロイダル磁場コイルは、数十メートルの長く狭い隙間にも樹脂を浸透させる必要があることから、低粘度の樹脂と、樹脂の浸透を妨げない積層テープの最終的な検証として、3分の1規模での真空含浸および加熱硬化を実施し、不良なく浸透されていることを確認した。
 本積層テープは、ITER機構の試験においても、耐放射線・電気絶縁性能を満たすことが確認されており、日本が製作を担当するトロイダル磁場コイルで6月から開始した電気絶縁作業に使用されているほか、欧州担当分にも採用されている。