こうのとり5号機打ち上げ成功 世界に先駆けた発見に期待

2015年8月20日

 三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月19日20時50分49秒(日本標準時)、宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV5)を搭載したH-IIBロケット5号機(H-IIB・F5)を種子島宇宙センターから打ち上げた。当初は16日に予定していたが、二度の延期を経て今回の打ち上げに至った。ロケットは計画通り飛行し、打上げ後14分54秒に「こうのとり」5号機を正常に分離したことを確認した。24日の夜には国際宇宙ステーション(ISS)に接近し、油井亀美也宇宙飛行士が操作するロボットアームで把持(キャプチャ)される。
 「こうのとり」5号機は、ISSの中で最大の実験モジュールである「きぼう」日本実験棟に加わる新しい実験装置を運ぶ役割がある。同実験棟には、船内実験室と船外実験プラットフォームの2つの実験スペースがあり、船内実験室では実験ラックを使用して微小重力環境や宇宙放射線などを利用した科学実験を行っている。
 「高エネルギー電子、ガンマ線観測装置『CALET(キャレット)』」では、最新の検出・電子技術を用いた「カロリメータ」と呼ばれる装置を搭載しており、宇宙を飛び交う粒子のエネルギー量とそれらの粒子の種類や飛来方向を測定する。CALETは非常に高いエネルギーの電子やガンマ線、陽子・原子各成分を高精度で観測することが可能で、宇宙線の発見以来100年を経た現在でも未解明である高エネルギー宇宙線の加速の源や、その発生機構に諸説あるガンマ線バーストの解明、さらに暗黒物質(ダークマター)の探索など、世界に先駆けた新発見が期待されている。
 またサントリー製造の酒類を、「きぼう」日本実験棟に運んだ上で、第1グループとして約1年間、第2グループとして2年以上の複数年(未定)にわたって、微小重力環境によってもたらされる無対流状態のお酒のまろやかさへの効果を検証する実験を行う。「きぼう」で保管されたサンプルと同期間日本国内に保管されたサンプルを、高輝度光科学研究センターおよび東京大学物性研究所の協力により、大型放射光施設「SPring-8」を利用して小角X線散乱法による高次構造の検出を行う予定である。
 安倍晋三首相は今回の打ち上げ成功を受けて同日、「こうのとり」5号機がISSに到達した段階で行われるドッキングの主要な作業が今回初めて日本人だけで行われることに触れ、宇宙の「チームジャパン」の活躍でミッションが成功することに期待を寄せた。また宇宙への挑戦について、「私達の夢とロマンをかきたてるだけでなく、人類に新しい『知』をもたらし、産業の発展などにつながるもの」としてこれからの宇宙開発利用への取り組みに意欲を示した。