迅速な賠償に向け責任の明確化求める 第3回原賠制度専門部会

2015年8月25日

真:原賠部会DSCF4762 原子力委員会の第3回原子力損害賠償制度専門部会が8月25日、都内で開催され、福島第一原子力発電所事故による損害の対応についてヒアリングを行った。
 福島県南相馬市を拠点とする原町商工会議所の高橋隆助会頭は、事故状況や影響に関する情報の不足や、資金繰りを含む事業計画が立てられない状況、賠償制度上の不備による混乱など、被災地域や企業からの主な声を紹介した。今後の事故発生時に備えるための検討課題として、行政組織の役割分担と責任の事前明確化、国の責任においての原子力損害賠償制度の方針決定、仮払いなど初期対応の制度化、風評被害に対する損害賠償の円滑化、自主的避難の対応方針についての明確化、現場の生の声を施策に反映させる仕組みの構築、賠償金支払い終了後の廃業増加防止、家賃等固定費や従業員維持のための追加的費用など営業損害として扱う項目の整理――を挙げた。
 全国農業協同組合中央会(JA全中)の馬場利彦参事は、農業分野にも出荷停止や風評被害を含め、広範囲に甚大な損害が発生したが、JAグループでは農業者の賠償請求を取りまとめてJA都道府県中央会に設置した協議会を通じ一元的に請求するなど、迅速な賠償に向けて支援を行ってきたことを報告した。JA福島中央会の渡邉祐一部長は、7月22日現在請求額2,180億円(不耕作798億円、園芸581億円など)のうち、94%にあたる2,054億円を受け取っているが、東京電力の対応迅速化、事前協議なしの損害賠償基準変更プロセスの見直し、返金等による事務煩雑化や古い請求の累積解消、営業損害賠償関係の引き続きの支援、損害賠償請求・支払管理にかかるシステム対応の改良――などの課題があるとした。
 また、事務局側より原子力損害賠償紛争解決(ADR)センターおよび原子力損害賠償・廃炉等支援機構法について説明があり、和解成立までの流れや申立状況などが紹介された。
 崎田裕子委員からは、被災した事業者などから賠償に対して不公平感や基準の見直しを求める声が多いことに対し、賠償制度をどのように決めてどう運用していくかという経過を含めて地域との信頼を築いていくことが大事だと感じられるとの意見があった。遠藤典子委員からは、国の賠償基準の明確化に向けて、実際に支払われた実例などを第三者機関で検証していく「賠償調査委員会」を設置してはどうかという提案があった。
 次回は漁業協同組合連合会からのヒアリングを行うとともに、原子力損害賠償・廃炉等支援機構がより詳細な説明を行う。