原子力学会、研究炉に関する検討で早期に提言へ

2015年9月9日

 日本原子力学会の上塚寛会長は9月4日、都内で記者会見を行い、同氏が6月に会長に就任して以来取り組んでいる研究炉に関する検討の状況について説明した。同学会では、大学や研究機関の持つ研究炉を巡って、その人材育成に果たす役割の重要性、一方で、新規制基準への対応に伴い、再稼働が不透明となっている現状に鑑み、専門分科会を設置し検討を進めているところだ。
 同日の会見では、分科会による実態調査結果から、人材育成のための研究炉運転が、大学炉で90%超、研究機関の原子炉で30~40%を占めているとして、教育・実習の他、研究開発を通じた研究者・技術者育成で、研究炉の果たす役割の大きさが示された。一方で、新規制基準への対応に伴い、すべての研究炉が停止し、再稼働に向けては、原子炉設置者の申請を受け、原子力規制委員会による審査が進行中だが、見通しが不透明な状況となっており、このままでは、研究開発の停滞や実習経験なしでの人材育成など、弊害が生じると懸念している。その上で、分科会では、研究炉の運営上の課題として、(1)施設の高経年化対策、(2)使用済み燃料の管理、(3)安全規制・核セキュリティ強化に対応した予算と人員の確保、(4)長期間の停止状態下での運転員の力量と士気の確保――をあげており、今後、さらに調査を進め、できるだけ早期に提言を発表することとしている。
 原子力学会では、6月の上塚会長就任会見で、人材育成における研究炉の役割と早期再稼働について検討を開始することを公表し、7月には日本学術会議主催の総合シンポジウムでパネル討論を行い、大学関係から意見を聴取するなど、具体的課題を整理している。