基本的考え方ヒア 山中氏「原子力の安全な運用に貢献し、革新的な進化起こしうる人材育成を」

2015年10月15日

 原子力委員会は10月14日、山中伸介大阪大学大学院工学研究科教授から原子力利用の「基本的考え方」についてヒアリングを行った。山中教授は、原子力規制委員会の核燃料安全専門審査会委員や、国際廃炉研究開発機構の技術委員などを務めている。
 山中教授は、まず原子力に携わるものとして、福島第一原子力発電所事故についての大いなる反省を忘れず、福島の復興のための技術開発に尽力し、原子力を安全に運用できるための教育と研究を続けて、日本の原子力が国際的に信頼されるものとなれるよう努力していきたいとの自身の思いを語った。
 その上で、原子力は、放射線科学、物質科学、核科学、革新的な原子力工学などの分野をはじめとして、今なお魅力ある分野であると述べ、まずは教員自身が「原子力の夢」を語れなくてはならないと強調した。
 また原子力人材については、世界の原子力の安全な運用に貢献するともに、原子力に革新的な進化を起こしうる素養を備える人材の育成を目標に掲げ、「国際的に通用する人材」(Global)、「地域と連携し地域に貢献できる人材」(Regional)、「個々の地域の特性を理解し、日本の原子力に貢献する技術者、研究者、教員など幅広い可能性を持つ人材」(Local)を育てていく必要を訴えた。
 人材育成の手法については、海外の大学や大阪大学などでの取組例を挙げ、原子力工学の標準的カリキュラムはきちんと押さえた上で、基礎工学や応用工学などでそれぞれの大学がもっと独自性を出して良いとの考えを述べた。また、教育・研究用原子炉や核燃料・放射性物質を用いた研究が困難となっている現状の他、異分野との連携のみならず原子力工学間の協働も不十分なことや、就職活動期間の長期化に伴う研究活動への支障など、原子力教育の現場での問題点を挙げた。
 これらを踏まえ、山中教授は、原子力委員会に対し、社会的ビジョンの中での原子力の位置づけを示すことなどを求めた。岡芳明委員長からは、大阪大学大学院で行われているOJE(On The Job Education)で、教員も学生とともに企業や自治体を訪問して製品開発や課題解決に取り組む「ビジネスエンジニア専攻プログラム」に関心が寄せられた。