日米セミナー、再稼働などを巡る原子力ガバナンスについて議論

2015年10月26日

SASAGAWA 原子力ガバナンスについて考える日米セミナー(主催:笹川平和財団、モデレーター:フランク・ジャージ・マンスフィールド財団理事長)が10月23日、都内で開催され、米国専門家との質疑応答を通じ、現在、日本で進められている原子力発電所の再稼働に向けたプロセスや責任所在、核燃料サイクルの停滞に伴う核セキュリティ上の問題などに関し議論を行った(=写真)。米国からは、アルゴンヌ国立研究所上席政策フェローのポール・ディックマン氏、米国議会図書館議会調査局エネルギー政策スペシャリストのマーク・ホルト氏、米国戦略国際問題研究所核不拡散プログラムディレクターのシャロン・スクアソーニ氏が登壇、発表の後、コメンテーターとして、東京工業大学特任教授の尾本彰氏、共同通信社編集委員の太田昌克氏が日本における問題点を切り出し、会場からも発言を求めた。
 ディックマン氏は米原子力規制委員会(NRC)でデール・E・クライン委員長の頃、首席補佐官を務めており、ホルト氏は米国議会での審議に資する多くの報告書執筆に関わるなど、原子力政策専門アナリストとして活躍中で、各氏はそれぞれの立場や経験に基づき、米国における原子力ガバナンスについて説明した。
 コメンテーターとして、太田氏は、日本における原子力ガバナンスの問題点として、「原子力の民主的統制のあり方」をまずあげ、再稼働の議論に関し「国会の姿が見えない。責任の所在がよく見えず、何となく決まっている」などと、立法府の監視機能の問題に言及したほか、米国NRCや連邦緊急事態管理庁(FEMA)のリーダーシップ発揮と比較しながら、避難計画の位置付けについても、住民の不安の高まりの一因ともなっていることを指摘した。
 これに対し、スクアソーニ氏は、日本の国会に置かれている原子力問題特別委員会に、外部からの視点が不足していることを指摘したほか、避難計画については、ディックマン氏より、「(原子炉設置)許認可のプロセスとの整合性がない。連続性、継続性が保証されて国民の信用につながる」などと、意見が述べられた。
 また、太田氏からは、「国会の監視機能に牙がない」といった非難の一方で、「国民の政策に対するオーナーシップの問題」にも触れながら、民主党政権時にエネルギー政策立案で行われた国民的議論や世論調査を、「憲政史上画期的な取組」として評価する発言もあった。
 再稼働が進まぬ状況に関連し、スクアソーニ氏は、日本に対し、「非核兵器国でウランを濃縮し、プルトニウムを分離している唯一の国」として、プルトニウムの在庫を減らすことと、核セキュリティ強化の必要性を指摘した。
 この他、尾本氏からは、法令に基づかない地元同意が実質的拘束力となっている状況や、規制に関する技術支援機関の独立性について、米国側からは先般の英中協力の動き、地球温暖化対策における原子力の役割について発言があった。