原子力機構、福島第一廃炉に向けた研究開発でディスカッション

JAEAHOKOKUKAI 日本原子力研究開発機構が最近の活動について一般向けに紹介する報告会が12月1日、東京・千代田区の有楽町朝日ホールで開催され、海外科学誌にも取り上げられた興味深い研究成果を披露するとともに、機構が重点施策の一つに掲げる福島復興支援については、廃炉に関する技術開発をテーマにパネルディスカッションが行われた。
 原子力損害賠償・廃炉等支援機構理事長の山名元氏をモデレーターとして行われたパネルディスカッションでは、福島研究基盤創生センター所長の河村弘氏と廃炉国際共同研究センター長の小川徹氏が、原子力機構による廃炉に向けた研究開発の取組状況について説明し、東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの村野兼司氏、東芝電力システム社理事の飯倉隆彦氏が、技術を現場に適用していく立場から、基礎基盤研究への期待を述べるなどした。
 その中で、河村氏は、遠隔操作機器の開発・実証、放射性物質の分析・研究でそれぞれ拠点となる「楢葉遠隔技術開発センター」、「大熊分析・研究センター」の整備状況と役割について紹介した。2016年度からの本格運用を目指す「楢葉遠隔技術開発センター」は、9月より一部運用を開始し、10月には安倍首相臨席のもと式典が開かれ、格納容器下部の実規模試験体を用いた止水技術の実証試験を行う試験棟建屋は、報告会前日の11月30日に完成に至ったことなどが報告された。
 これに対し、福島第一原子力発電所の廃炉に向け、飯倉氏は、「取組の考え方を理解・共有」、「機関・組織の連携の枠組み構築と廃炉進展での見直し」、「福島での協働、現場指向の基礎基盤研究」を提言したのに加え、適切な評価がなされることも基礎基盤研究が現場で役立つために必要なことを訴えた。実際に廃炉現場に携わる村野氏からは、汚染水などのリスクは低減してきたものの、今後も新たなリスクの発生する可能性があるとして、技術の適用には慎重を期する必要などが述べられた。
 また、富岡町に2016年度内の「国際共同研究棟」しゅん工を目指す「廃炉国際共同研究センター」の役割に関して、小川氏は、海外の大学・研究機関との国際協力を通じ、通常の廃炉とは異なる福島第一の廃棄物問題などへの対応が図られるとともに、高等教育に携わってきた経験から、「新しい人材育成の仕組み」を形成していくことにも期待をかけた。