HLW処分問題対話集会 福井県内の学生 世代間で問題を話し合う工夫など議論

2015年12月9日

FukuiHLWIMG_6760 福井大学大学院工学研究科原子力・エネルギー安全工学専攻主催の「高レベル放射性廃棄物(HLW)の処分問題を考えるinふくい2015」が12月5日、福井市内で開催された。同大学では2008年より、原子力利用によって生じるHLW処分問題をテーマとする対話集会(意見交換会)を行っており、2014年には県内の大学や高専の学生が集まり、フリーな意見交換の場として学生との対話を行った。第5回目の開催となる今年は、福井大学の学生のほか、福井工業大学(工学部原子力技術応用工学科)、福井県立大学、福井工業高等専門学校の学生たち約30名が参加した。今回は参加学生への事前意識調査で興味・関心の高かった「合意形成」を論点に据え、それぞれが事前にHLW処分問題について多面的に考えるなどの準備をして、対話の場に臨んだ。
 まず赤坂秀成原産協会地域交流部マネージャーから高レベル放射性廃棄物処分問題についての情報提供として、フィンランドやスウェーデン、フランスなど先進的な海外の事例や、2015年5月に閣議決定した「特定放射性廃棄物に関する基本方針」で国が科学的有望地を示すことなどを盛り込んだ日本の取り組みなどを紹介した。
 この後、学生たちは5つのグループに分かれ、模造紙や付箋にアイディアを書き込みながらそれぞれの考えを話し合った。その後のグループ発表では、以下のような意見が出された。
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○今の日本では圧倒的に一般の知識が不足している。まずはフィンランドのように時間をかけて、住民が知識をつけたり意見を交換したりする場を作り、押し付けでなく住民主体の意思決定を行っていくべきだ。また交付金に関しても、子育てや高齢者福祉などにも利用できるよう住民の意見を反映し、原子力とともに町を作っていくという姿勢が重要だ。
○原子力発電所を使っているという意識や責任が足りないのが問題。国と国民の対話の機会など知識のばらつきを共有するシステムを作り、様々な意見を取り入れていく姿勢が大切だ。また立地県だけでなく周辺の県などにも配慮する交付金の制度があってよい。
○既に原子力発電所事故が起きてしまった今は国民の固定観念が働いており、日本は処分場決定のタイミングを失ってしまった。フランスのように長期的に取り組むべきところを、決めるのが遅すぎた。HLW処分問題に関する会話や集会の場もなく、話し合いの環境づくりから取り組まなければならない。処分を担うことになる現在の小学生など次世代を対象として学校教育を進めていく必要があり、その内容について国が基礎を作っていくべきだ。
○社会全体がHLWについてもっと勉強する機会が必要だ。地域への情報発信の手段として講演会などを行うことが考えられるが、その内容を聞いた人がさらに他の人へも伝えていくことができるとよい。小中学校からHLW処分問題についてわかりやすい知識を定着させていくべきだが、勉強する機会がなかった世代である大人にも学ぶ機会が必要だ。例えば親も参加できる小学校の授業参観でHLW処分問題を取り上げれば、家族間で話し合うことができるのではないか。海外事例も紹介すれば理解を得ることができるのではないか。HLW処分問題は、超長期的であり他の問題とは違うが、すぐに答えがでなくても継続して知識に触れる機会を作っていくことが大切だ。
○冷静な議論を行う上で大事なことについて考えた。自治体の首長が判断を行う時は、透明性を確保することを心がけるべきだ。地域という中で自分の考えを確立していくのも大事。海外では第三者機関が関与しているが、日本は賛成派と反対派で意見が対立してしまうために合意形成が難しくなっている。
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 参加した各校の先生からは「合意形成に至らないのは知識不足が大きな要因であり、住民主体で知識を得る取り組みをしていこうというのが各グループに共通する内容だった」、「福井県内で学んだ学生として、今後社会に出た時に原子力問題について問われる機会もあると思うので、今後も継続して考えを深めていってほしい」との意見があり、学生たちに今回の対話をきっかけに身近なところでもHLW処分問題について話し合っていくことを期待した。