基本的考え方ヒア 鈴木氏「核燃料サイクル柔軟性を高める取り組みを」

2016年1月6日

SuzukiKihontekiDSCF5332 原子力委員会は12月25日、鈴木達治郎長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)センター長・教授から原子力利用の「基本的考え方」についてヒアリングを行った。
鈴木氏はまず、自身が原子力委員を務めていた2012年5月、同委の原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会が提出した核燃料サイクル選択肢評価で、「直接処分が経済性と核不拡散・核セキュリティ面で有利であり、資源効率のみMOXリサイクルが有利だがその他は大差がない」という結果となったことを述べた。これを踏まえ、新たなエネルギー基本計画の「核燃料サイクルの戦略的柔軟性」実現のためにも、原子力委員会の「原子力利用の基本的考え方」で全量再処理を基本とする核燃料サイクル政策の見直しは不可欠だとした。さらに、核燃料サイクルについては、硬直的な全量再処理政策を脱却して将来の状況に応じ、柔軟性を高めることを優先すべきであると主張。中間貯蔵の拡大や直接処分を可能とする取り組みを進めることが重要であり、特にプルトニウム在庫量の削減は国際社会の安全保障上からも必須の課題だと強調した。
阿部信泰委員が、「管理さえしていればプルトニウム量が多くても問題はないのでは」と質問したのに対し、鈴木氏は、「いつかはどこかでプルトニウムを減らす必要があるというのが世界の認識であり、削減することを政策として打ち出すことが国際的な信頼醸成につながる」と応えた。
 なお、鈴木氏は、核兵器廃絶を求める国際会議「第61回パグウォッシュ会議世界大会」(2015年11月1日から5日まで長崎で開催)の組織委員長を務めているが、11月下旬に公表されたパグウォッシュ評議会の声明では、科学者の社会的責任の重大性に鑑み、プルトニウムの分離のための再処理に慎重な姿勢を示している。