国立がんセンター、10年生存率を公表しデータベース機能改善で患者の治療法選択にも利便

2016年1月21日

 国立がん研究センターは1月20日、全国16のがん専門診療施設で診断治療が行われた約35,000症例に関する部位別の10年生存率と、32施設で診断診療が行われた約147,000症例に関する部位別の5年生存率を公表した。同センターでは、国内でがんの10年生存率に関するデータがまとまった形で公表されるのは初めてで、本集計により長期的ながん種別予後の傾向が示されたものと評価している。また、これに伴い、2012年より公開されている部位別・施設別の5年生存率をグラフで示すデータベース「KapWeb」に、10年生存率のデータとともに、放射線治療、化学療法など、治療法の選択項目を追加し、患者にとっての参考情報として、利便を図るようにした。
 1999~2002年に診断治療が行われた症例を対象とした10年生存率は、全部位・全病期で58.2%、同じデータでの5年生存率は63.1%だった。部位別には、甲状腺が最も高く90.9%、次いで、前立腺84.8%、子宮(体部)83.1%、乳80.4%、子宮(頸部)73.6%、大腸69.8%で、逆に低いのは、膵臓4.9%、肝臓15.3%などとなっている。
 また、2004~07年に診断治療が行われた症例を対象とした5年生存率は、全部位・全病期で68.8%だった。1997~99年の症例、1997~2000年の症例、2001~03年の症例に続く算出で、1997年の62.0%から改善傾向が見られており、化学療法、放射線治療、早期発見技術の進歩によるものと考察している。
 全国がん(成人病)センター協議会がホームページで公開する「KapWeb」は、がん種、病期、性別、年齢など、様々な組み合わせによる条件絞り込みで生存率の推移を図示できるデータベースで、今回の新規機能追加により、患者に対し、治療法の選択や再発への注意有無など、多くの情報を提供できるようになった。因みに、1999~2002年の症例で、5年生存率と10年生存率があまり変わらないのは、胃がん(それぞれ70.9%、69.0%)、逆に大きく開くのは肝臓がん(同32.2%、15.3%)があげられている。