原子力委員会 「基本的考え方」骨子案をもとに委員で議論進める

2016年1月22日

Kihonteki0122DSCF5409 原子力委員会は1月22日、2015年より有識者ヒアリングを進めてきた「基本的考え方」について、論点整理に向けた議論を行った。
 今後検討を進めるにあたって、まず「(原子力政策の目標を定める上での)原子力委員会の基本認識」を整理した上で「原子力政策の基本目標」を明確にし、目標への取り組みを進める上で考慮すべき「原子力を取り巻く環境」を整理・分析するとともに、「これまでの原子力政策の主要な成果と課題」を振り返った上で、今後の原子力政策の「重点課題とその方向性」を明らかにしていくとした。今回は事務局が整理したペーパーを元に「基本認識」「基本目標」までを議論し、次回から「取り巻く環境」以下を進めていくが、議論の内容によっては適宜議題を戻して検討する。当初は1月にとりまとめを行う予定だったが遅れることとなり、今後3月中くらいまでに盛り込む内容を示した上で、2016年後半に「基本的考え方」をまとめ、閣議決定をめざしていく。
 原子力委員会の基本認識としては、国民の不信や不安に対して真摯に向き合って原子力利用への信頼を回復することなど「国民の意識」、少子高齢化の進行や生産年齢人口割合の減少、財政状況の厳しさや国内エネルギー需給構造の変化、電力・原子力事業の競争環境の激化等の「社会・経済状況の変化」、地球温暖化やエネルギーおよび食料資源への需要増大など「地球規模課題への対応」――の3点を基本目標策定の起点として整理した。
 原子力政策の基本目標としては、(1)福島の復興・再生に取り組み、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を活用する(2)国民からの信頼の回復を目指すとともに、立地地域との共生の取り組みを進める(3)原子力利用で地球課題に対応し、人類社会の持続的発展に貢献する(4)原子力エネルギーを安全・安定に利用し、国民生活の向上を目指す(5)原子力の基盤強化と、社会・経済状況の変化への適応を目指す――ことを挙げた。
 阿部信泰委員は、国民が関心を寄せる原子力の利用量についても、ある程度の定性的な示唆は必要ではないかとの意見を述べた。中西友子委員は、福島第一発電所事故の反省をふまえ、万が一原子力事故が起こった場合について省庁を超えた司令塔などの仕組みを含めてもっと言及したほうがよいとの考えを語った。岡芳明委員長は、従来のように決定事項に対して実施を求めるばかりでなく、その後のフォローまできちんと行っていくようやり方を大きく変えないといけないとの認識を示した。
 なお今回の会議の冒頭では阿部委員の希望で、2015年に有識者として「基本的考え方」について意見を聴取した故澤昭裕氏への黙祷を捧げた。