原子力安全合同シンポ、福島第二が過酷事故を免れた教訓など発表

2016年2月2日

 福島第一原子力発電所事故後の安全対策について考える日本機械学会他、関連学会共催による合同シンポジウムが1月28日、東京大学本郷キャンパスで行われ、大地震に見舞われながらも過酷事故に至らなかった発電所での対応について報告を受け、今後の安全性向上に向け議論した。
 その中で、東京電力からは、福島第二原子力発電所の発災時の対応について発表があり、1~4号機が定格出力運転中のところ、大地震を受け全号機が自動停止し、津波襲来後の電源盤被水により原子炉除熱機能を喪失したものの、高圧注水で原子炉水位を維持するなど、緊急復旧で対処に当たり、地震発生から4日目に全号機の原子炉冷温停止を達成した経緯を説明した。その上で、事故収束の成功要因として、(1)中央制御室への適切な支援と指揮命令系統の一貫性確保、(2)状況把握と推移予測に基づく対応手段の代替可能性を常に増す戦略、(3)現場状況の確認に基づく復旧優先順位の明確化、(4)代替品利用の決断も含む緊急調達と輸送の戦略、(5)社内外からの人的・物的支援――を掲げる一方、復旧作業上、苦労した点も述べた。特に、対応要員のケアに関しては、大地震に伴い、発電所員の5割は家屋が損壊、8割は避難を要する地域に居住していたとしており、家族の安否への不安、事態の長期化に伴うストレス、衛生面のリスク管理などにも継続的なフォローが必要だと振り返っている。
 この他、東北電力からは女川原子力発電所、日本原子力発電からは東海第二発電所における発災当時の対応、得られた教訓について発表があった。
 機械学会の取組としては、北海道大学の奈良林直氏が、フィルターベントの高性能化について、銀ゼオライトを用いた放射性ヨウ素除去のメカニズムを説明するなどした。