産総研他、低濃度放射性セシウムのモニタリング効率化で技術開発

2016年2月8日

 産業技術総合研究所の研究チームは2月5日、青色顔料として知られるプルシアンブルーを用い、海水中の低濃度放射性セシウムを迅速にモニタリングできる技術を開発したと発表した。これまで多くの時間を要していた前処理が簡便になり、海水環境における精密な放射性セシウム濃度測定や、長期的な影響評価に貢献することが期待される。
 分子組成上、放射性セシウムを取り込む性質を持つプルシアンブルーを利用した環境水のモニタリングシステムで、産総研はこれまで、不織布メーカーの日本バイリーン社との協力で、亜鉛置換体プルシアンブルー(Zn-C)を使った不織布カートリッジを開発している。今回開発された銅置換体プルシアンブルー不織布カートリッジ(Cu-C)では、1リットル当たり0.01ベクレルの低濃度放射性セシウム(飲料水の基準値は10ベクレル)を約40分で濃縮し、測定時間が大幅に短縮され、効率的な海水モニタリングを行うことが可能となる。
 産総研によると、今回開発したCu-Cは、海水20リットルを毎分0.1リットルで通水した場合で97%以上、毎分0.5リットルの場合で95%以上の溶存態(水に溶けている)放射性セシウムを回収でき、従来のZn-Cより倍以上の回収率となっている比較結果を示している。
 また、福島県農業総合センターと実施した淡水中の放射性セシウムの回収試験によると、従来型のZn-Cでは100リットル程度までしか濃縮できなかったが、Cu-Cでは2,000リットルを通水しても80%の回収率が確保されたことなどから、Cu-Cは、淡水中の溶存態放射性セシウム濃度が1リットル当たりミリベクレル単位の極めて低い場合でも、モニタリングに利用できるものとみている。