原子力機構シンポ、放射性廃棄物の低減に向け国際協力のあり方を考える

2016年2月18日

JAEASYMPO1 放射性廃棄物の低減に向けて、将来の国際協力のあり方を考える日本原子力研究開発機構主催のシンポジウムが2月17日、都内で開かれ、フランス、米国、中国、インドより研究開発の取組状況について報告を受け、日本が持つ大型研究施設の果たす役割や人材育成に関する課題について議論した(=写真)。
 シンポジウムでは、OECD/NEA事務局長のW.D.マグウッド氏が基調講演に立ち、同機関による今世紀半ば頃を見通した原子力発電・核燃料サイクルの将来スコープ「Nuclear Innovation Roadmap」(NI2050)について述べ、3月にも専門家会合が始動しつつある状況を報告した。また、元原子力委員長でNPO法人「ニュークリア・サロン」代表理事の藤家洋一氏が、資源の完全リサイクル利用と有害物質のゼロリリースを同時達成する原子力システム概念「Self-Consistent Nuclear Energy System」(SCNES)を掲げ、(1)エネルギー生産、(2)燃料生産、(3)廃棄物管理、(4)安全確保、(5)非軍事利用――の5つの機能を発揮させる道筋について披露した。
エネルギーセキュリティと廃棄物対策の2つの観点から意義のある高速炉開発について、国内外からの発表を受け、パネルディスカッションでは、フランス原子力代替・エネルギー庁(CEA)のS.ピベ氏が、実証炉「ASTRID」プロジェクトの重要性を改めて強調した上で、これまで培ってきた原型炉「フェニックス」などの経験活用とともに、科学コミュニティが有効に機能する必要にも言及した。
 ディスカッションには、内閣府の革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」で、高レベル放射性廃棄物の低減・資源化に関する研究開発に取り組む藤田玲子氏(科学技術振興機構)も登壇し、長寿命核分裂生成物(LLFP)を分離回収し、核変換で得られたレアメタルを資源として再利用するエコ・システムについて紹介した。こうした廃棄物低減の取組に対し、米国アイダホ国立研究所のK.M.ゴフ氏は、自国の状況にも触れながら「処分場は必ず必要となる」とした上で、一般国民が全体のプロセスに関わり合意形成を図っていかねばならないと指摘した。
JAEASYMPO2 また、原子力機構から、「もんじゅ」や「J-PARC」による研究開発状況について発表があったのに対し、ゴフ氏は大型研究施設を国際的に活用することで若い人たちを刺激していくことを、藤田氏も日本原子力学会長を務めた経験を踏まえ、他分野からの人材参入により原子力界が活性化することを期待するなどした。
 トラブルの続く「もんじゅ」に対し会場参加者からの厳しい意見もあったが、シンポジウム終了に際して、マグウッド氏がコメントに立ち、全般の議論を通じ「もんじゅ」や「常陽」の今後の取扱いに関しては、「日本が決めること」としながらも、国際協力の観点からも十分に検討する必要を指摘し、また、藤家氏もカザフスタンとの協力で実施した「EAGLE試験」(高速炉の過酷事故に関する現象解明)を振り返り、国際共同研究の意義を強調した。