規制委、原子力災害発生時のSPEEDI活用に慎重な姿勢

2016年3月16日

 原子力規制委員会は3月16日の定例会合で、原子力災害発生時に大気中放射性物質の拡散予測に基づいて避難すること、いわゆるSPEEDIの活用について慎重な考え方を示した。3月11日に政府の原子力関係閣僚会議が、全国知事会からの提言への対応方針として、実効的な避難計画の策定に向け、自治体が大気中放射性物質の拡散計算結果を活用することについて、規制委員会に対し専門的・技術的観点から検討を求めたもの。
 規制委員会は2014年10月に、避難や屋内退避などの防護措置判断は、緊急時モニタリングの実測値に基づくという原子力災害対策指針の方針に従い、SPEEDIによる計算結果は使用しないという考え方を示しているほか、2015年7月にも、防災基本計画改定を踏まえた対応の関連で、気象予測の不確実性に鑑み、SPEEDIに基づく避難はかえって放射線被ばくの影響が増大する危険性があると指摘している。
 一方、全国知事会の危機管理・防災特別委員会(委員長=泉田裕彦新潟県知事)は2015年8月、「モニタリングによる実測値による判断では、住民の被ばくを前提に避難指示等を行うこととなる」として、避難ルートの検討や準備のため、SPEEDIの活用を求める要請書を国に提出している。
 規制委員会がこのほど示した考え方では、「原子力災害発生時においてプルーム(気体状または粒子状の物質を含んだ空気の一団)の放出時期を事前に予測することは不可能」、「かえって避難行動を混乱させ被ばくの危険性を増大させる」として、予測に基づき方向を示唆して避難する弊害を改めて述べている。
 田中俊一委員長は、「慌てて避難することが、いかに大きな犠牲を伴うか」などと、福島第一原子力発電所事故発生時を振り返り、現時点で原子力災害対策指針を見直す必要はないとした。