原子力学会、福島第一事故後5年を経て学術界の役割について考えるシンポ

2016年3月18日

SOGOSYMPO 福島第一原子力発電所事故から5年が経過したのを踏まえ、今後、学術界が原子力分野で果たすべき役割について考えるシンポジウム(日本原子力学会他主催)が3月16日、東京・港区の日本学術会議講堂で開かれた。
 パネル討論では、原子力学会が2013年にまとめた事故調査報告について、東京大学工学系研究科教授の越塚誠一氏が説明し、事故の背後要因として「専門家自らの役割に関する認識不足」が指摘されたことを述べ議論に先鞭を付けた。
 これを受けて、地震・津波対策の分野で東京大学工学系研究科教授の高田毅士氏が、自然現象の不確実性から「専門知を集約して政策決定者が判断しやすい環境を作る」役割をあげるとともに、ステークホルダーに対する学術界による働きかけの重要性を指摘し、特に、一般国民に対しては、技術的問題についてわかりやすく説明する必要を強調した。さらに、マスメディアの立場から、日本経済新聞論説委員の滝順一氏は、(1)緊急時に必要な情報を提供する、(2)政府と業界からの独立性を高める、(3)多様な意見の良い聞き手になる、(4)多様な見解を一つの声にする――ことを学術界への期待として掲げた。
 この他、原子力委員で農学専門の中西友子氏が福島の森林再生や営農再開で、東京電力廃炉カンパニーの松本純氏が福島第一の燃料デブリ取り出しに向けて、それぞれ学術界の知見活用に期待するなどした。
 会場参加者からは、福島第一原子力発電所事故の検証を行ってきた政府、国会、民間の3事故調査委員会を集約する新たな委員会の立ち上げを、学術界に求める意見などがあった。