東工大 研究力のさらなる強化に向けて科学技術創成研究院を設置

2016年3月23日

 東京工業大学の三島良直学長と安藤真理事・副学長(研究担当)は3月22日に記者会見を行い、4月からスタートする東工大の研究改革について説明した。
 同大学は2016年4月1日より、研究体制を集約して約180名の研究者を擁する科学技術創成研究院を設置する。同研究院は学長直属の研究組織となり、現行の研究組織を再編成して新たなミッションを担う6つの「研究所・研究センター」と、最先端研究を小規模のチームで機動的に推進する10の「研究ユニット」を統括する。
 研究ユニットは卓越したリーダーが“尖った”研究を大きく育てるための仕組としており、設置期間は原則5年間として、具体的なミッションを定めてその実現を図る。今回の改革によって、複雑化する社会の要請に応え、新たな分野や融合分野の研究を創出し、研究成果の社会への還元を一層促進する。ユニットと研究所・研究センターとの連携により「世界の研究ハブ(WRHI)」実現を目指す。
 研究所・研究センターの1つである「先導原子力研究所」では、現行の「原子炉工学研究所」を母体としており、原子核に内在するエネルギーの有効利用を目指した理工学研究により、社会と調和した原子力システムを構築し、資源、エネルギー、環境課題の解決に資することにより世界の持続的発展に貢献すると共に、社会に役立つ高度な放射線利用技術を開発する。
 研究ユニットの1つである「原子燃料サイクル研究ユニット」では、原子燃料サイクルにおいて、高レベル廃棄物の処理・処分工程の技術開発を行い、放射性廃棄物等による環境負荷と放射線リスクを大幅に低減した環境保全型原子燃料サイクルの構築を目指すとともに、福島第一原子力発電所事故に関し、土壌の放射性物質除去の技術開発、汚染水処分方法の選択肢を提言し、問題解決への合意形成のシナリオ作りも行っていく。同ユニットのリーダーとなる竹下健二教授は、東工大には社会科学やあらゆる技術分野の専門家がいるため、原子力以外の専門家を集めた分野横断型の研究チーム作りを行いやすいことが強みであるとして、「技術と社会科学を総合的に生かし、原子力が抱える社会的課題に対して選択肢を提供していくことができる」と語っている。