核セキュリティ・サミット閉幕 透明性向上などの日本の取り組みアピール
安倍晋三首相は3月31日から4月1日まで、米国ワシントンで開催された核セキュリティ・サミットに出席した。同サミットには、53か国と3つの国際機関から約40名の首脳レベルが参加し、首脳コミュニケおよび5つの行動計画を採択して終了した。2010年より隔年で開催されてきた同サミットは、第四回目となる今回で最後となる。
安倍首相は基調発言で、日本における核セキュリティは福島第一原子力発電所事故と密接不可分であると言及。事故の教訓を世界と共有し、原子力発電所の安全性や事故対策の知見を世界に広げていくことが日本の使命だと強調した。また、原子力の平和的利用を将来に亘って継続していくためには完全な透明性の確保が必要であるとし、日本は一貫して民生用原子力の透明性向上について世界をリードしていくと力を込めた。日本は「利用目的のないプルトニウムは持たない」との原則を実践するとし、前回サミットで約束した日本原子力研究開発機構の高速炉臨界実験装置(FCA)核燃料の全量撤去を日米の緊密な連携のもとで完了したことや、京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)を低濃縮化して高濃縮ウラン燃料の全量撤去を行うと決定したことを報告した。
日本は同日、これらの世界の核セキュリティ強化の取り組みに関する国際社会へのメッセージとして、2014年オランダ・ハーグでの日米誓約を踏まえつつ日米共同声明の形にまとめて発出し、各国から評価された。また、輸送セキュリティに関する共同声明をリード国として取りまとめたほか、大量破壊兵器・物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップ共同声明に関して議長国としてまとめ、発出した。
安倍首相はワシントン訪問中に各国との首脳会談も行った。1日の日印首脳会談ではモディ首相に対し、原子力協力を進めていく上でインドによる軍縮・不拡散分野の取り組みが重要だとし、日本は核兵器不拡散条約(NPT)普遍化、包括的核実験禁止条約(CTBT)早期発効、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の早期交渉開始を重視する立場であることを踏まえ、対話を続けて行きたい考えを述べた。また同日のナザルバエフ・カザフスタン大統領との会談では、カザフスタン経済の多角化は重要であり、原子力をはじめ、幅広い分野において民間ベースの協力の拡大を推進していくと述べたほか、両国間で2016年1月にCTBT発効促進に向けた共同声明を発出したことは有意義であり、引き続き協働することで一致した。
3月30日には天野之弥国際原子力機関(IAEA)事務局長が安倍首相を表敬して、核セキュリティ強化、イラン核合意の検証・監視,北朝鮮の核問題、原子力の平和的利用等におけるIAEAの取組について説明したほか、日本のIAEAへの貢献に謝意を示すとともに引き続き連携していきたいと述べた。