都市大、事故発生確率の新たな定量評価手法開発

2016年6月21日

 東京都市大学の研究チームはこのほど、原子力施設の安全関連システムにおいて、時間経過に伴う様々な動的変化を考慮した事故発生確率の定量評価手法を開発したと発表した。
 原子力発電所の事故は、福島第一原子力発電所事故のように、自然災害の起因事象に端を発し、電源の喪失や機器の故障、判断や操作ミスといった人的過誤、安全機器の復旧作業失敗など、複数の事象が同時に起こることなどで発生することがある。従来の確率論的リスク評価(PRA)では、機器故障や人的過誤が原因となる事象を主に評価対象とし、外部(自然災害等)からの影響を詳細に評価してこなかったため、安全機能については時間変化のない定常状態であると考え、機能喪失確率を算出する場合、平均的な喪失確率を用いて定量評価してきた。
 本研究では、原子力施設のさらなる安全性向上を目的に、安全関連システムにおける時間経過に伴う機器故障の発生や復旧作業の進捗といった様々な動的変化を、確率過程を用いてモデル化することにより、原子炉停止、炉心冷却、崩壊熱除去など、安全機能が喪失する確率を求め、事故の発生確率を定量的に評価する手法を開発した。
 この手法では、炉心損傷頻度の算出における経時的な故障確率の変化を、各事象の発生確率を時間の関数として扱うことで考慮する。例えば、機器の状態を、「正常」(Normal:N)、「故障」(Fault:F)、「修復」(Maintenance:M)、「手動停止」(Shutdown:S)の4つとし、各時刻で各状態にある確率を連立微分方程式で解き、この解に基づき、機器喪失状態にある機器の組合せによって、炉心損傷が発生する確率を経時的に求めるという手法だ。
 研究チームでは、本評価手法を適用することで、より厳密なリスクの把握や安全対策設備に対する様々な変動要因を考慮した有効性の確認など、リスク上の判断が可能となることが期待できるとしている。