エネ研2017年度予測、原子力再稼働が「わが国の経済を上押し」

2016年7月26日

 日本エネルギー経済研究所は7月26日、2017年度までの国内経済・エネルギー需給の予測を発表した。世界経済は緩やかな成長にとどまり、2017年にかけて燃料輸入価格が徐々に上昇していくといった情勢のもと、原子力発電については、2016年度末までに累計7基、2017年度末までに累計19基が再稼働すると想定した「基準シナリオ」で、2017年度の総発電電力量は1,198億kWh(2010年度比42%)に達するなどと試算している。
 原子力発電は現在、原子力規制委員会による新規制基準をクリアした九州電力川内1、2号機、関西電力高浜3、4号機の計4基が再稼働に至っているほか、計22基の審査が申請されており、今回の予測では、司法判断や地元の同意など、原子力を巡る不透明要素も多いことを考慮し、「基準シナリオ」以外に、再稼働の想定シナリオを3つ設けて、3E(経済、エネルギー安全保障、環境)への影響などを評価した。
 それによると、原子力発電所の再稼働数を2017年度末までに25基とした「高位ケース」では、同じく12基とした「低位ケース」に比べて、2017年度で、化石燃料輸入総額は7,000億円減少、電力コスト単価は0.6円/kWh低下、CO2排出量は5,200万トン減少、GDPは0.12%増加などと評価し、「化石燃料の削減、電力コストの低減を通じてわが国の経済を上押しする」として、再稼働の効用を述べている。
 さらに、「低位ケース」と比較し、石油輸入の節減量は、「基準シナリオ」と「高位ケース」で、それぞれ420万キロリットル、580万キロリットル、LNG輸入の節減量では、それぞれ880万トン、1,210万トンにも上ると試算しており、原子力の再稼働が国際市場の需給緩和要因にもなり得ると評価している。
 また、今回のエネルギー予測では、高浜3、4号機の司法判断による運転差止めに関連し、発受電量1,000億kWhの地域で、100万kWの原子力プラント1基が1年間停止したとした場合、化石燃料費は600億円増加、当該地域の電力コスト単価は全国ベースの約10倍の上げ幅となる0.4円/kWh上昇するなどと、地域レベルでの影響についても評価を述べている。
 原子力発電所の再稼働ペースに応じた「基準シナリオ」、「高位ケース」、「低位ケース」の他、政府の長期エネルギー需給見通しによる電源構成を参照した仮想的な「ベストミックスケース」での評価結果も示されている。