JAEA施設供用の現状報告 未踏の研究テーマを追求

2016年8月17日

DSCF6669bright  三浦幸俊日本原子力研究開発機構(JAEA)理事は8月16日の原子力委員会で、JAEAにおける施設供用の現状について報告した。
 JAEAでは、大学や産業界で基盤的な原子力施設を維持できなくなっている状況を踏まえ、日本の原子力研究機関の中核として保有する原子力研究開発基盤施設を利用した人材育成や施設供用および産学官連携協力に継続して取り組んでいる。
 人材に関しては、大学連携ネットワークや連携大学院方式、学生実習および夏期休暇実習、公募による特別研究生や博士研究員、国内および海外研修などを通じ、課題解決能力が高く国内外で活躍できる研究者・技術者を育成している。
 施設供用制度は、JAEAの保有する試験研究炉や放射性物質の取扱施設等の基盤施設を計画的かつ適切に維持・管理しながら、国内外の幅広い分野の外部利用者に対し適切な対価を得て利用に供する制度で、中性子利用・照射後試験施設、イオン加速器施設、放射光利用施設、加速器質量分析施設、校正用施設、遠隔技術開発試験施設など10施設が対象となっている。同制度は2010年度時点で1000件を超える利用があったが、震災後は新規制基準対応による研究用原子炉JRR-3とJRR-4(2015年12月に廃止措置申請)の停止で2011年度より急激に落ち込み、2015年度の利用は、民間企業195件、公的研究機関20件、大学119件だった。
 産学官連携協力も積極的に行っており、共同研究においては施設や機材の相互利用により、茨城大学と熊谷組の「森林から生活圏への放射性セシウムの移行を抑制する新技術」や、量子科学技術研究開発機構と鳥取大学および総合科学研究機構の「パーキンソン病発症につながる『病態』タンパク質分子の異常なふるまいの発見」などの成果を社会に還元している。
 課題と今後のあり方については、共同研究テーマは未踏の最先端の研究テーマであるべきこと、研究資金および大学院生などの旅費や滞在費が十分でないことなどを挙げた。また、原子力科学分野で革新的な原理や現象の発見を目指す黎明研究制度や、一般寄付金を財源として斬新で挑戦的な研究・開発の芽出しを支援する萌芽研究制度について紹介した。
 中西友子委員からは、萌芽研究制度についてもっと認知度を高めてほしいとの意見があった。岡芳明委員長は、量子科学技術研究開発機構との再編を機として縦割りを改善し、互いの得意な面を活かして組織的に取り組んでいくことを求めた。