食品中の放射性物質に関する5年間の検査結果、シンポ開催も

2016年9月6日

FOODRISCOMMI 福島第一原子力発電所事故後5年間に、政府・原子力災害対策本部のガイドラインに基づいて自治体が実施した食品中の放射性物質に関する検査結果が、厚生労働省などにより取りまとめられ、今後の検査のあり方について、行政、生産者、消費者らを交えて考えるシンポジウムが、8月29日に福島県郡山市で、9月2日に東京都千代田区(=写真)でそれぞれ行われた。
 食品中の放射性物質に関する基準値は、事故直後に暫定規制値が設けられたが、2012年4月に食品安全委員会による健康影響評価や、食品の国際規格を策定しているコーデックス委員会が指標とする年間線量1mSvを踏まえ、一般食品で100ベクレル/kg、牛乳および乳幼児用食品で50ベクレル/kg、飲料水で10ベクレル/kgとして設定された。一方、検査については、原子力災害対策本部が2011年4月以降、品目や頻度に関するガイドラインを定め、自治体により検査計画が策定の上、実施されており、得られた検査結果は厚労省が取りまとめ、基準値を超えない場合も含めすべて公表している。対象の自治体は、青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県の17都県となっている。
 5年間の検査結果によると、栽培・飼養管理が可能な品目群で、食品中のセシウム濃度が基準値を超えたのは、2011年度が1.0%、2012年度が0.2%、2013年度が0.04%、2014年度が0.002%、2015年度が0.002%と、極めて低下しており、基準値を超える食品は、これ以外の栽培・飼養管理が困難な品目群に分類される一部の水産物、野生のきのこ類、山菜類、野生鳥獣肉類などが主になっている。東京開催のシンポジウムで、農林水産省消費・安全局食品安全政策課長の吉岡修氏は、きのこの放射性物質対策の事例として、きのこ原木・ほだ木の除染や簡易ハウスの導入、汚染を低減させる栽培技術の普及、野生きのこの採取に関する情報提供などの取組について紹介した。
 パネルディスカッションで、全国地域婦人団体連合会幹事の夏目智子氏は、「放射能は見えない。見えないものに対する怖れを払拭するには科学的データが必要」などと、また、自治体の立場から、栃木県農政部農政課課長補佐の青木敦隆氏も、東京スカイツリーにあるアンテナショップ「とちまる」での検査結果PRについて触れ、消費者とのリスクコミュニケーションツールとして、それぞれ食品中の放射性物質に関する検査の意義を述べた。一方で、科学ジャーナリストの松永和紀氏が、自身の取材経験から、検査に要するコストが1機関当たり年間およそ1,000万円にも上ることをあげ、生産者側からも努力をアピールすべきなどと主張すると、原木しいたけ生産者の君嶋治氏は、老人大学にも足を運び、様々な場で風評払拭に努めていることを強調した。
 会場からは、チェルノブイリ事故の経験に触れ、子供の内部被ばくに対する不安から、コストをかけても検査を行う必要を訴える意見などがあった。