原子力学会、「もんじゅ」の有効活用で見解
日本原子力学会は9月23日、高速増殖原型炉「もんじゅ」の有効活用に向けた見解を発表した。政府の原子力関係閣僚会議は同21日に決定した「今後の高速炉開発の進め方」の中で、高速炉開発方針を年内に策定するとともに、「もんじゅ」については、廃炉を含めた抜本的見直しを行うこととしている。
同学会は見解の冒頭、「もんじゅ」について、「わが国が高速増殖炉を実現する上で重要な知見や技術の向上をもたらす研究開発施設であり、原子力規制委員会の勧告、『もんじゅの在り方に関する検討会』の提言を踏まえ、適切な体制のもと、無理をせずに段階的に出力を上げ、運転、保守点検の実績を重ね、その有効活用を図るべき」と述べている。さらに、資源小国の日本にとって、原子力エネルギーの長期的・安定的な利用のため、「高速増殖炉とその核燃料サイクル技術の実用化が必須」とするとともに、エネルギー基本計画でも述べられている高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減を高速増殖炉の利点としてあげている。
その上で、先行するロシア、フランスに加え、近年、インドや中国でも旺盛な高速増殖炉の導入計画の現状について触れ、「もんじゅ」については、「日米欧の原子力利用国の中で発電できる唯一の高速炉」として、実験炉「常陽」ではなしえない各種試験による成果取得を通じ、将来の大型高速増殖炉実用化につながることに期待を寄せた。「もんじゅ」は、発電プラントとしての成立性の実証とナトリウム取扱技術の確立を目的として研究開発が進められてきたが、今後の運転に向けた見解では、技術者の結集、慎重な出力上昇、限定された運転サイクル数、コスト抑制など、貴重な国費投入を省みて有効活用が図られるよう求めている。
一方で、1994年の初臨界以降、ナトリウム漏えい事故や保守管理面での不備に伴いほとんど運転実績を積んでいない「もんじゅ」の現状を巡って、見解では、規制委員会の勧告に従い早急に「もんじゅに専心特化する意欲ある運営主体」を設立するとともに、巨額の研究開発投資を投じる必要性についても国民理解に努めるべきなどと指摘している。