「高速炉開発会議」が始動、経産相「高速炉開発を進めていく重要性を確認」

2016年10月11日

fbrkaigi 今後の高速炉開発の基本方針と具体的取組について、官民参画により検討を行う「高速炉開発会議」が10月7日、経済産業省庁舎内で初会合を開いた。同会議は、去る9月21日の原子力関係閣僚会議で、福島第一原子力発電所事故や電力システム改革など、近年のわが国における高速炉開発を取り巻く情勢変化を踏まえ、設置することとなったもので、経済産業相を議長とし、文部科学相、日本原子力研究開発機構理事長、電気事業連合会会長、三菱重工業社長が構成メンバー。原子力関係閣僚会議では、「『エネルギー基本計画』に基づき、核燃料サイクルを推進するとともに、高速炉の研究開発に取り組むとの方針を堅持する」との考えのもと、年内に高速炉開発方針を策定するとともに、高速増殖原型炉「もんじゅ」については、廃炉も含め抜本的に見直し、その取扱いに関する政府方針を決定することとしている。
 検討開始に際し、世耕弘成経産相は、資源小国の日本にとって、低廉で安定的な電力供給を維持するには原子力エネルギーが不可欠との認識を改めて示した上で、「核燃料サイクルに正面から向き合わねばならない」と強調し、将来的な高速炉サイクルの具体化を見据え議論に先鞭を付けた。
 また、高速炉の研究開発を所管する立場から、松野博一文科相は、「『もんじゅ』や『常陽』がどう貢献していくか」と、実証炉への道筋具体化に向け問題意識を示すなどした。
 この他、原子力機構の児玉敏雄理事長は、技術・人材の蓄積や立地地域との信頼関係の重要性にも触れながら「高速炉サイクル技術は必要不可欠」と、電事連の勝野哲会長は、軽水炉によるプルサーマルの推進とともに、続く高速炉開発も「途切れることなく一貫性を持って」などと、核燃料サイクルの重要性を強調した。また、2007年に高速増殖炉開発のエンジニアリング中核企業に選定された三菱重工の宮永俊一社長は「固持し続けるべき重要な国家基幹技術」と、高速炉実用化に期待を寄せた。
 初会合では、高速炉開発の意義と国際動向、これまでの経緯と教訓について整理し、文科省からは、「もんじゅ」の運転終了までに係るコスト試算が示されるなどした。「もんじゅ」は現在、原子力規制委員会による保安措置命令により運転再開に進めない状況にあるが、今後、運転開始までを8年、運転期間を8年と想定した場合、最低でも5,400億円(廃炉に係る費用は含まない)を要すると試算されている。一方で、資源エネルギー庁がまとめた高速炉開発を巡る国際動向によると、2、3か国間では、日米、日仏、日米仏、日カザフスタン、米仏、仏印、仏中、仏露の協力が、多国間では、IAEA高速炉ワーキンググループ、第四世代原子力システム国際フォーラム(GIF)などのプロジェクトが進められているほか、2015年にはOECD/NEAによる研究開発ロードマップ作成(NI2050)も開始している。
 世耕経産相は、会合を終え、「高速炉開発を進めていく重要性を確認した。人材確保の観点からも道筋を示していきたい」などとしている。