世界原子力大学夏季研修報告会 国際的な議論の場でのコミュニケーション学ぶ

2016年10月20日

img_8167 2016年世界原子力大学(WNU)夏季研修の報告会が10月19日、原産協会で開催された。同研修はカナダの首都オタワで6月28日から8月5日までの6週間行われ、31か国から71名の若手原子力技術者や規制者などが参加した。日本からは、原産協会の「向坊隆記念国際人育成事業」の参加費助成を受けた4名のほか、日立GEニュークリア・エナジーが1名、原子力規制庁が2名の若手をそれぞれ独自に派遣し、計7名の参加となった。様々な講師を迎えての講義や、小グループに分かれての議論およびプレゼンテーションが行われ、第3週目にはカナダ国内の原子力関係施設のテクニカルツアーとして、シガーレイクのウラン鉱山、ダーリントン原子力発電所、ポートホープ燃料工場、チョークリバー研究所を訪問し、原子力のフロントエンドからバックエンドまでを見学した。
 日本エヌ・ユー・エスエネルギー事業支援本部安全・環境解析ユニットの坪能和宏氏は、特に放射性廃棄物に関してコミュニティの意見に耳を傾けたり地域との約束を確実に実行したりすることなどの重要性を説く講義に感銘を受けたと語った。また、最後の総括週にはグループで原子力専門誌に論文を投稿する目標を掲げ、実際に掲載されたことなどを報告した。
 東京電力ホールディングス福島第一廃炉推進カンパニープロジェクト計画部廃炉国際調査グループの八木直人氏は、自社内で用いている世界原子力発電事業者協会(WANO)小冊子の内容についての疑問を直接WANOのプロゼスキーCEOに伺って理解できたことや、福島第一原子力発電所事故の放射能汚染の誤った風評が広まっている国の参加者に対して膝詰めで実際の線量率や食品検査について正確な情報を説明したことなどが印象に残っていると語った。
 同社原子力運営管理部燃料管理グループの木村小督氏は、チョークリバー研究所を訪れた際にホットセルの訓練施設がなくOJTで訓練を行っている事例などを目にして今後国内外の技術や良好事例を取り入れるためのヒントを得られたことや、各国紹介プレゼンテーションで日本を印象づけ日本を理解してもらうために動画などのさまざまな工夫を取り入れたことなどについて述べた。
 東芝電力システム社原子力安全システム設計部・主務の廣内崇幸氏は、参加者と交流する中で各国の原子力発電所の建設状況や世界中に浸透する原子力関連施設の重要性は認めるが自身の周囲への立地を嫌う「NIMBY」の風潮などについて直接聞くことができ、今後も各国とのネットワークを活かして自身の業務にも活用していきたいと意欲を示した。
 4人はそれぞれ、グループ内で議論したり発表準備をしたりする日々が続き、多様な意見を受け入れることや自身の意見を整理して発信する訓練ができたほか、参加者同士でかけがえのない絆ができたと語った。
img_8177 続いて、原産協会人材育成部の藤原健太郎主任より、原子力青年国際会議(IYNC)2016参加報告が行われた。国際NGOであるIYNCの隔年行事である同会議は、概ね35歳以下の原子力技術者・研究者が、プログラムの策定、会場手配、参加者募集、講師招へい、資金調達等、運営の全てを自主的に実施する。9回目となる今回の会議は「Nuclear Powering our Life」をテーマとして7月24日から30日まで、中国の杭州市で開催された。32か国・地域から約400名が参加し、日本からは大学や研究所などから6名が参加した。会議では、発電所の運転および保守、新型炉、過酷事故、核燃料サイクル、人材育成、コミュニケーション等原子力の全般にわたる課題について、論文発表やワークショップ、パネルディスカッション等が行われた。藤原主任は日本原子力人材育成ネットワークについての口頭発表を行い、バイヤーズガイドなどの日本の原子力界を理解するための資料などを配布した。また、テクニカルツアーでは秦山原子力発電所などが見学でき、西湖散策やショー鑑賞など人的ネットワーク構築促進のためのソーシャルプログラムも用意されていた。なお、次回アルゼンチンのバリローチェ市で開催されるIYNC2018の場で、IYNC2020の開催地を決定する投票が行われる。