2040年までの世界のエネルギー需給展望、ASEANにスポット

2016年10月25日

 日本エネルギー経済研究所は10月21日、2040年までの世界のエネルギー需給展望を発表した。
 それによると、世界のエネルギー消費は、2014年の13,699百万トン-石油換算(Mtoe)から、2040年には18,904Mtoeへと増加し、その増分5,205Mtoeは、現在世界第1、2位の消費国である米国と中国とを合わせた消費量に匹敵し、1990年からの50年間で世界のエネルギー消費量は倍増するなどと予測している。地域的にみると、エネルギー消費の増加はOECD域外が圧倒的で、非OECD諸国の増分では、中国(1,213Mtoe)、インド(939Mtoe)、ASEAN(728Mtoe)の占める部分が、日本の現消費量の6年分以上に相当する2,879Mtoeにも上り極めて顕著だとしている。
 こうした新たに生じるエネルギー需要を満たすのは、第一義的に、天然ガス、石油を中心とする化石燃料で、「2040年においても人類が必要とするエネルギーの78%を賄う」と、その圧倒的なシェアを力説した上で、石油消費量の堅調な増加、天然ガス利用地域の多様化とともに、石炭消費については、世界的には鈍化傾向にある一方、ASEANでは依存がむしろ高まり、気候変動問題への現実的な対応が求められるなどと警鐘を鳴らしている。
 また、電力消費量については、今後も世界的に増加し続けるが、特に著しいのは非OECD諸国で、2040年までの増分は、中国、インド、米国、EU、インドネシアの順に大きく、引き続き中国が最大消費国の座を維持し、インドはEUと日本を凌いで米国に次ぐ第3の消費国となると予測している。
 原子力については、発電量が2014年の2,535TWhから2040年には4,357TWhに伸びるが、世界の発電量全体に占める割合は現在の11%と変わらず、設備容量では、ドイツ、日本など8か国・地域で減少、一方で、14か国が新規導入、18か国が増設・増強することで、2015年の399GWから2040年には612GWまで拡大するとの見通しを示した。
 今回のエネルギー需給展望では、特に、経済成長や人口増加に伴い世界の需要増のけん引役であるASEANにスポットを当て、電力需要の急増、石炭依存の高まり、さらに、2030年のエネルギー純輸入地域への陥落などを危惧しているが、原子力については、2025年以降にタイ、ベトナム、インドネシア、マレーシアで合計16GWが導入されるものの、2040年における発電構成では4%に過ぎないなどと述べている。因みに、ASEANの一次エネルギー消費は2014年の624Mtoeから2040年の1,352Mtoeまで年率3.0%で増加、化石燃料への依存は2014年の74%から2040年には77%に上昇、石炭、石油、天然ガスの消費量は、2040年に2014年比のそれぞれ3.5倍、1.9倍、2.0倍に増加するとの分析結果だ。