高速炉開発会議、「常陽」と「もんじゅ」で得た知見を実証炉以降の開発に活用

2016年10月28日

 今後の高速炉開発の基本方針について検討する政府の「高速炉開発会議」(議長=世耕弘成経済産業相)は10月27日、実験炉から商用炉までの開発段階ごとに得るべき技術的知見とともに、新たな開発目標のあり方、開発スペック、国際協力の意義について整理した。
 会議では、資源エネルギー庁が、既に開発が行われ成果を挙げている実験炉「常陽」、原型炉「もんじゅ」、これに続く実証炉、商用炉までの各開発ステージにおける目的・実施内容をイメージで示した上、「常陽」の今後の活用策、「もんじゅ」で得られた知見について、日本原子力研究開発機構、文部科学省が説明を行った。
 「常陽」は(1)運転試験を通じての技術の高度化、(2)燃料・材料の照射、(3)高速炉実用化のための革新技術の実証――を主目的とし、1977年の初臨界後、運転時間は約71,000時間、試験用集合体の照射実績は約100体など、多くの技術開発成果を挙げており、これらは、「もんじゅ」の設計・建設に反映されている。原子力機構によると、今後も燃料・材料の照射試験で、実証炉以降で求められる安全性・経済性の向上、放射性廃棄物の減容化・有害度低減の実現に向け、「常陽」で行うべき高速炉の研究開発課題を挙げた上で、「国際協力により有効で合理的な開発の推進が期待できる」としている。
 「もんじゅ」に関しては、文科省が25日に開かれた有識者検討会でのまとめとして、開発を通して得られた成果、再開した場合に見込まれる成果について説明し、(1)設計・製作・建設、(2)試運転・運転、(3)運転管理・保守管理、(4)トラブル対策、(5)新規制基準への適合性対応――などから取得される多く技術的成果は、実証炉以降の高速炉開発に資するものと評価している。
 また、今後の高速炉開発に当たっての視座について、資源エネルギー庁はまず、新たな実証炉以降の開発目標のあり方として、震災以降の技術的・社会的要請を踏まえ、「福島事故の安全性やテロ対策を考慮に入れた『より高い安全性の確保』」、「実用段階で他電源と比較したコスト優位性を得る『経済性の確保』」、「『国際協力の徹底活用』による最新知見の獲得/開発コスト抑制」、「中長期のエネルギー政策の方向性を踏まえた廃棄物減容・有害度低減等」を挙げた。その上で、将来の電力需要の見込みや、耐震性などの最新知見も踏まえ、従来の「ループ型」に加え「タンク型」の知見も蓄積し、精緻に比較検討して実証炉以降の炉型を選定するものとしている。
 さらに、高速炉国際協力の意義としては、コストやリスクの分担、世界の最新知見の取り込み、人材の効果的育成があげられたが、これに関し今回の会合では、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)の担当部長のニコラ・ドゥヴィクトール氏が、同国が開発を進める実証炉「ASTRID」(タンク型、60万kW)計画についてプレゼンを行い、「日本が有する技術、知見、実験施設は、ASTRID計画にとって重要」などと期待を寄せた。
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