原子力委原賠制度専門部会 有限責任は課題多く困難 無限責任の賠償措置額引き上げへ

2016年11月17日

dscf7166 原子力委員会の第15回原子力損害賠償制度専門部会が11月16日に都内で開催され、原子力事業者の責任の範囲および原子力事業者と国の負担のあり方などについて議論された。事業者を有限責任とする場合には責任限度額の水準を示す必要があるが、発災事業者として果たすべき責任と事業者の予見可能性確保の両面を踏まえて限度額を決定することは、非常に困難である。また限度額を超えた場合には、新たに設ける国の補償制度で対応することとなり、被害者の請求先が発災事業者から国へ変更される事態も発生する。こうしたことから有限責任とした場合、立地地域住民をはじめとして国民理解を得ることは難しいと考えられ、法的にも制度的にも短期的に解決できない課題が多いとした。一方で従来どおり無限責任とするならば、福島第一原子力発電所事故のような重大事故が発生した場合の損害賠償リスクは多大であることが再認識されたとして、現行の1,200億円を上限とする賠償措置額の引き上げの検討が提案された。
 崎田裕子NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長は、有限責任か無限責任かでなく被災者をしっかり救済する仕組みで安心感を持ってもらうことが大切という流れで議論が進んできたので、無限とする場合の環境整備についてもう少し詳しく書き加えていくべきと意見を述べた。辰巳菊子日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問は、福島第一原子力発電所事故の賠償を受けた人も含めほとんど国民はこれまでどのくらい国の援助があったのか理解されていない可能性があるとし、ADRの運用費用など具体的な金額についても説明が必要だと語った。遠藤典子慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授は、予見可能性とは事業計画についてきちんとファイナンスができることであり、もし事故が起きたらおそらく国が何らかの手立てをしてくれるだろうというだけでは、原子力事業者の予見可能性確保ということにはならないと指摘した。
 次回は、制度設計についてより具体的に詰めていく。