原子力機構他が湧水抑制技術を開発、地層処分とともに他の土木建築への適用も期待

2016年12月12日

グラウチングの概念図ⓒJAEA

 日本原子力研究開発機構と清水建設は12月9日、岩盤の亀裂にセメントなどの溶液を注入し坑道へ流れ込む湧水を抑制する「グラウチング」と呼ばれる施工で、深度500mまでの高水圧下(水深400m相当)においても、放射性廃棄物地層処分の取組が先行するスウェーデンの湧水抑制目標を満足する技術を開発したと発表した。地層処分に係る研究開発を行う同機構瑞浪超深地層研究所の研究坑道掘削で得られた成果で、湧水量の予測に「グラウチング」の効果を考慮できる理論式を用い、目標の湧水抑制を達成するために必要な岩盤の透水性の低下割合や注入範囲を設定したほか、透水性に合わせた「グラウチング」材料を使い分けることにより達成したもの。
 成果発表によると、深度500mの水平坑道において、「グラウチング」を実施して坑道を掘削した後、比較的湧水量が多い区間(約16m)で、湧水抑制技術を向上させるための試行として、その外側の範囲を対象に、さらに「グラウチング」を実施した結果、対象区間の湧水量は、「グラウチング」を実施しない場合の予測値に対し、約100分の1まで低減できたとしている。また、同区間のうち、湧水箇所が多い区間(約4m)に追加実施した「グラウチング」により、5か所あった1リットル/分以上の湧水箇所すべてを1リットル/分未満に低減でき、スウェーデンで示されている地層処分の処分坑道における湧水箇所対応の目安を満足することが確認された。
 日本で、高レベル放射性廃棄物の最終処分は地下300m以深の地層に埋設することとなっており、地下深部の高水圧下における十分な湧水抑制対策技術の確立は重要な課題の一つとされていたが、今回の成果は、亀裂性岩盤に適用できる汎用的技術として、処分場の維持コスト低減や人工バリアの施工精度向上に寄与するとともに、トンネル工事など、他の土木建築における湧水抑制に適用することも期待される。