規制委、関西電力豊松副社長ら3事業者の原子力部門幹部を招き意見交換

2017年1月20日

 原子力規制委員会は1月18日、原子力発電の課題に関する複数事業者との意見交換を公開の場で行った。規制委員会からは、伴信彦委員(進行役)、更田豊志委員の他、原子力規制庁幹部が、事業者からは、関西電力の豊松秀己副社長、中部電力の阪口正敏副社長、東京電力の姉川尚史常務執行役らが出席した。
 規制委員会では2014年より、原子力の安全性向上について、各電気事業者の幹部との意見交換を順次行っており、2016年末までに既に2巡目を終了しているが、今回の意見交換は、電気事業連合会からの要望を踏まえ、事業者の原子力部門責任者らを招き、原子力安全規制を巡る幅広い事項を対象に話し合うものとして始まった。今後、2、3か月に1回程度の頻度で行われる。
 意見交換ではまず、豊松氏が発言に立ち、「ステークホルダー間の共通のゴールである『原子力施設の安全性向上』を図っていく上で、規制当局と原子力事業者が『規制に係る科学的・合理的な議論』を持つことは非常に重要」とする事業者全体としての認識を示した上で、原子力発電を巡る課題について述べた。現在、新規制基準への適合性に係る原子力プラントの審査が規制委員会で進められているが、豊松氏は、意見の中で、2060年度までの原子力発電電力量の見通し(設備利用率70%想定)をグラフ化し、運転期間の制限により急激に下降していく現状を示した。また、資源エネルギー庁が2015年にまとめた長期エネルギー需給見通しでは、2030年度の総発電電力量に占める原子力比率は「20~22%」とされているが、グラフで見ると、「40年運転」の場合は2020年代前半に、「60年運転」の場合は2040年代前半に、この比率を割り込むことから、豊松氏は、直面する課題として、(1)再稼働、(2)稼働率の向上、(3)40年超運転、(4)新増設・リプレース――をあげ、まずは「早期に10基程度の再稼働を目指す」と強調した。
 その上で、豊松氏は、原子力規制に関する事業者側の課題として、法令で定める40年までの運転期間を延長する審査に関し、規制委員会への申請期間が現在、「運転期間満了前1年以上1年3か月以内」と短いため、審査に対応した必要な安全対策工事を施す期間を差し引くと、実際に運転できる年数が大幅に削られることを、高浜発電所1、2号機を例に述べ、規制委員会に見直しを要望した。これに対し、プラント審査を担当する更田委員は、産業界から知見・データが積極的に提示されることを期待した上で、「可能なものとみられる」と、申請期間の見直しに前向きな考えを示した。
 また、更田委員は、現在、検討が進められている検査制度の見直しに関し、「我々にとっても、現場事業者にとっても大きなチャレンジ」と述べ、規制側も被規制側も一層の意識改革が必要となることを強調すると、阪口氏は、原子力安全推進協会(JANSI)や世界原子力発電事業者協会(WANO)と連携したピアレビュー活動などを通じ意識改革に努めていることを述べた。