文科省作業部会、技術基盤・人材育成を支える原子力施設のあり方について検討開始

2017年1月31日

 技術・人材養成の場としての原子力施設のあり方について検討する文部科学省の作業部会が1月31日、初会合を開いた。
 文科省が所管する13の試験研究炉は現在、福島第一原子力発電所事故後の新規制基準対応などに伴い、いずれも長期停止中で、高経年化も進んでいることから、今後の原子力発電所の運転管理や廃炉に必要な技術の維持、人材の確保・育成に与える影響が懸念されている。同日会合で挨拶に立った主査の山口彰氏(東京大学工学系研究科教授)は、原子力の人材育成・研究基盤について、「改めてしっかり議論すべき課題」との認識を示したほか、社会に対して発信していく重要性も強調し、参集した学界、産業界、メディア関係の委員らに活発な議論がなされるよう求めた。
 12月に政府は、今後の高速炉開発の方針と合わせ、日本原子力研究開発機構「もんじゅ」の取扱いに関する方針を示しており、その中で、「もんじゅ」は廃止措置へと移行する一方、将来的には同サイトを活用し、新たな試験研究炉を設置することで、原子力研究や人材育成を支える基盤となる中核的拠点となるよう位置付けるとしている。
 初会合では、原子力機構が昨秋取りまとめた「施設中長期計画案」を説明し、保有する原子力施設の老朽化(約5割が築年数40年以上)、新規制基準等への対応、バックエンド対策を背景に、限られた資源でこれまで通りの運用が困難な状況から、「集約化・重点化」、「安全確保」、「バックエンド対策」の三位一体により、研究開発機能の維持・発展を目指すとしている。同計画の中で、高速炉臨界実験施設(FCA)と材料試験炉(JMTR)が、継続利用に高額なコストを要することなどから、廃止措置施設としてあげられている。
 1968年に初臨界したJMTRは、照射利用のための各種設備が備わっていることから、原子力発電プラントの燃料・材料開発に利用されてきたほか、近年では、アジア諸国を始めとした海外の原子力人材育成にも貢献するなど、「国内に代替機能を有する炉がない施設」となっている。こうした背景から、同機構は、学識経験者から構成した「JMTR運営・利用委員会」による照射炉利用のニーズ調査結果について説明し、その中で、海外の試験研究炉の現状として、日本と同様、高経年化に伴い、JMTRと同規模の熱出力50MW以上の高出力炉の基数が2025年頃に3基程度にまで落ち込むとの見通しを示した。その上で、同委員会の提言として、「JMTRに代わる世界最先端の機能を備える新たな照射炉の設計・建設が必須」などと、作業部会に対し早急な検討を求めた。
 作業部会は今後、半年~1年程度検討を進め、中間取りまとめを行う予定だ。