原子力委員会 コミュニケーションに関しヒアリング 対面での取り組み重要

2017年2月8日

 原子力委員会は2月7日、「原子力利用に関する基本的考え方」について、国民とのコミュニケーション促進に関し、有識者へのヒアリングを行った。
 作家・エッセイストであり「フォーラム・エネルギーを考える」代表の神津カンナ氏は、物書きの仕事について、あまり知られていない分野の中に自ら入っていき、一般の人たちに伝えていく「通訳」の仕事であると説明。その上で大切なことは、情報を咀嚼し納得して自分の言葉にして発することだとして、専門家の借り物の言葉を使っているだけは理解が得られないと指摘した。また、元々興味があり話を聞きたい人に聞いてもらうだけでは、いつまでもコミュニケーションのスキルが上達しないことにも触れ、専門家の知識や道理と一般の感受性をつなぐトランスサイエンスの領域に携わる人間を育てていかなければならないと主張した。
 村上朋子日本エネルギー経済研究所戦略研究ユニット原子力グループマネージャーは、エネルギーとリスクに関するコミュニケーションに関して、2つの事例を挙げて説明した。6つの大学の学生を対象としたエネルギー講演および対話とその後に行ったアンケートでは、若い世代はエネルギーと地球環境に関する深い問題意識があり、原子力発電を利用することについて「安全性を確保の上継続利用を容認する」が最も多い回答となった結果が出ており、エネルギー教育の現場では直接顔を合わせての対話が重要であると語った。また、フィンランド・エネルギー研究所の年代・性別・学歴・職業など回答者の属性を詳細に分析した原子力世論調査の例を示し、双方向コミュニケーションの際には結果を最も左右する属性に着目し、どの属性のどのような人々を対象に何を問いかけ、どのような意見を引き出していくのが効果的かを把握する必要があるとした。
 原子力委員会事務局からは、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)が1月にパリで開催した「原子力の意思決定におけるステークホルダー・インボルブメント(SI)に関するワークショップ」への参加報告があり、SIプロセスは国ごとの状況によるところが大きく、決められた方式は存在しないが対面での取り組みは共通して重要であることや、若い世代を巻き込みソーシャルメディアなどの新しいツールの活用も検討すべきこと、根拠のある情報を出し続けることが大切であることなどが認識として得られたと語った。
 岡芳明原子力委員長は、様々な立場(特に自由な立場)の人の意見を聞いて考えること、外国の事例と比較して考えることにしていると語り、米国と比べると日本では産業界のコミュニケーション活動が極めて弱いことを指摘し、原子力を推進したいならばしっかりと主張していくことが重要であるとした。また、「トランスサイエンス」を提唱したワインバーグ博士は原子力物理学者であり、科学と社会の関係については原子力界で50年以上にわたりずっと大きな課題であり続けているとの認識を改めて語った。