【第50回原産年次大会】今井会長、初回大会を振り返り「原子力発電の重要性はいささかも変わらず」

 「第50回原産年次大会」が4月11日、東京国際フォーラム(東京・千代田区)で開幕した。第50回となる今大会は、「いま、過去を未来へ結ぶ」を基調テーマに掲げ、半世紀の歴史を振り返り、現在の原子力を取り巻く課題を直視した上で、未来を展望し夢や期待を語る記念大会として行われる。
 開会に当たり、今井敬・原産協会会長(=写真上)が所信表明に立ち、まず記念大会に際し、第1回が行われた1968年当時、国内では「運転を開始した東海発電所に加えて、建設中の3基を含む多数の原子力発電所の新設が予定されていた」という機運で、ウラン燃料の確保などを展望し「核燃料問題」が最初の大会基調テーマだったことに触れた。その後、二度のオイルショックの経験から、原子力をベースロードとしたエネルギーの「ベストミックス」が構築され、安全運転の実績を積み重ねてきた結果、2000年代以降、世界的なエネルギー需要の増大と地球環境問題を背景に、原子力発電が各国で再評価され、「原子力ルネッサンス」を迎えたなどと振り返った。
 今井会長は、続けて、2011年の福島第一原子力発電所事故発生に伴い、エネルギー政策を巡る議論は紛糾し、エネルギー基本計画では、原子力を「重要なベースロード電源」としながらも、脱原子力を求める国民世論を踏まえ、依存度を「可能な限り低減する」こととなったほか、原子力発電プラントは新規制基準への対応が求められ、わずか5基のみしか再稼働に至っていないという現状を述べた。
 一方で、エネルギー需給の大部分を海外から輸入した化石燃料に頼っている日本の現状から、「安定供給の面において準国産エネルギーである原子力発電の重要性はいささかも変わっていない」としたほか、地球環境問題に関する国際約束も「一定程度の原子力発電を活用しなければ達成不可能」と明言した上で、原子力産業界として「原子力が再び人々に信頼され、社会の役に立っていけるよう、事故を十分に反省した上で、現在の難局を乗り越えていかなければならない」と、今井会長は訴えかけた。
 続いて、来賓として挨拶に立った中川俊直経済産業大臣政務官は、これまでの原産年次大会の歴史を「大きな足跡」と称えたほか、現状の日本の原子力政策について「大きな転換点にある」との認識を示し、政府として、(1)福島の復興、(2)持続的で一貫性のある原子力の活用、(3)原子力のさらなる安全性向上――に努めていくとした。
 開会セッションでは、IAEA事務局長の天野之弥氏、電気事業連合会会長の勝野哲氏、日本総合研究所会長の寺島実郎氏、米原子力エネルギー協会副理事長のダニエル・リップマン氏が講演を行った。

セッション終了後記者会見に臨む天野氏

 天野氏は、アジア地域を中心とする世界的な原子力発電の拡大機運について「今後数十年にわたって成長する」と見通したほか、途上国における医療、農業などの改善に向けた放射線利用の可能性にも言及し、先端技術を有する日本は「IAEAにとって極めて重要なパートナー」として、特に、若手や女性の専門家がIAEAで活躍することに期待を寄せた。また、福島第一原子力発電所の廃炉について、「長いプロセスとなる。国際協力が極めて重要」としたほか、廃炉は原子力発電を行うすべての国が直面する問題であることから、「日本の経験が今後多くの国々に貢献する」などと述べた。
 勝野氏は、安定供給確保、環境保全、経済性の観点から、エネルギーミックスの再構築に向け、「原子力は不可欠」として、原子力発電所の再稼働、安全性向上、核燃料サイクルの推進に努めていくなどと事業者の姿勢を示した。その中で、同氏は、震災後の原子力発電所の停止に伴う経済影響として、火力発電の焚き増しより、2016年度までの累計で15.5兆円ものコスト増につながったことを述べた。
 寺島氏は、中東情勢や米国トランプ政権などがもたらす世界のエネルギー地政学の変化について触れ、日本が「非核保有国で唯一核燃料サイクルを許容されている」意義などを強調し、原子力の技術基盤を維持・蓄積していく必要性を訴えた。
 リップマン氏は、改良型原子炉の建設や次世代原子炉SMRの進展などを紹介し、新政権発足後も米国にとって「原子力は不可欠な重要インフラ」とする一方、雇用の問題にも触れ「既存の原子炉を維持し新規投資を促進する」という課題もあることを述べた。