【第50回原産年次大会】セッション1:これからの原子力の役割は? 日米関係から模索
初日午後のセッション1では、日本経済新聞社編集委員の滝順一氏をモデレーターに迎え、日米関係を中心としたこれからの原子力について、著名な3氏より意見が交わされた。
最初に登壇したダニエル・ポネマン氏(元米エネルギー省副長官)は、「日米の揺るぎない協力関係は不変である」とした上で、日米パートナーシップによる原子力開発体制の意義を強調。日米が先導して次世代炉開発に取り組むことで、原子力を基軸に据えた経済繁栄を達成することができる。原子力がすべてではないが、原子力なしでは気候変動対策としての2度Cシナリオを達成することができない、と締めくくった。
次に宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)は、「人間社会は大きな転換期を迎えており、世界は戦後のuniversalismの時代から、戦前のindividualismに回帰しようとしている」と指摘。日本は海洋立国/貿易立国であり、individualismでは生き残れない国であるとした上で、日本が生き残るためにはエネルギー調達が不可欠であり、多様なエネルギー源確保の重要性を説いた。
一方、小山堅氏(日本エネルギー経済研究所常務理事)は、今後も世界のエネルギー需要は増大を続け、中でもアジアが中心になってくる。エネルギーの多様性はとても重要であるが、今後もエネルギー全体の7割以上は化石燃料に依存せざるをえない、等の現実をグラフを用いて明らかにした。
宮家氏と小山氏がともに指摘したのは、現時点で低価格な石油価格やガス価格は、今後もそうとは限らないということだ。燃料価格は平時でこそマーケットメカニズムで決まるが、有事には政治で決まる。そうした事実を忘却して安易に脱原子力を唱えるのは楽観にすぎないのだろう。セッションの締めに滝氏が指摘したように、今官民の垣根を越えた集合的な英知が問われているのかもしれない。