【第50回原産年次大会】若手特別セッション「若手が語る原子力の未来・夢」
大会の最後を飾る若手特別セッション「若手が語る原子力の未来・夢」では、将来を担う国内外の若手が、原子力の将来展望や原子力を活用した未来に対する夢を語り、今後自分たちの世代に何ができて何が必要なのかを議論した。
最初に、米国のデワン氏による基調講演が行われた。同氏は、米国マサチューセッツ工科大学博士課程在籍中の2011年に、原子炉設計企業を同僚と共同で創業し、経営に携わっている。
◎<米国>レスリー・デワン/トランスアトミック社共同創業者兼最高経営責任者(CEO)「世界の持続可能な開発目標達成に向けた次世代原子炉の利用」

私が原子力エンジニアになったのは、まず私自身が環境保護主義者であり、ホッキョクグマなど野生動物の保全等に関連する気候変動の問題を解決したいからだ。また、幼少の頃から科学に興味を持っており、学んだ内容がどのように未来に貢献できるのかを示してくれる物理学の教師に恵まれたことも大きい。しかし1950年代に原子力に熱狂していた産業界は、スリーマイル島やチェルノブイリの事故を経て悲観主義に包まれており、私が大学で原子力を学び始めた時には熱意をなかなか周囲と共有できなかった。
今日、科学的な伝統ある原子力を利用していくか、過去の失敗を恐れて断念するかという選択肢があるが、私は前者の科学者であり続ける道を選び、原子力への新しいアプローチに取り組むことにした。我々は、できるだけ多くのエネルギーをウラン燃料から引き出しアクチノイド廃棄物を最小限に抑える「高燃焼度」、大気圧で動作するシステムで低コスト化と安全性向上を実現する「システム圧力」、低エネルギー性中性子を利用することで材料の損傷を避ける「熱スペクトル」、この3つの要素を満たすことから液体燃料を使う「溶融塩炉」を選んだ。同炉はオークリッジ国立研究所で既に1960~70年代に開発され、すでにプロトタイプに成功してメルトダウンが起きないという安全上の利点を実証していたが、当時はコストの高さと電力密度の低さから見捨てられた技術となっていた。我々はモデレーターと燃料塩を改良し、当時よりもコンパクトで低コストの溶融塩炉を開発した。
これをできるだけ早く実用化して人々に利用してもらう方法として、我々自身でベンチャー企業を立ち上げることにした。将来の電力網や石炭火力発電所の代替を考え、まず520MWの発電炉を設計した。当初、原子力のような開発に長期間を要するハード技術への投資を募るのは苦労したが、航空宇宙業界の投資家の理解を得ることに成功し、ニュースにも取り上げられて一般にも知られるようになった。
現在、実証スケールの10MW小型炉をチームで設計しており、概念実証を行って520MWの商業炉につなげていくつもりだ。また溶融塩炉には腐食性があり、かつ高温で放射性を持つことから、特に重要とされる材質実験も行っており、これまでにかなり良好な結果を得ている。さらに原子炉特有の問題である規制に関しては、米議会の科学宇宙技術委員会で原子力規制を整理して先進的な技術を取り入れやすくすべきだと訴える機会があり、3月末に上院に提出された法案が可決されたばかりだ。
世界には、太陽光、水力、地熱など様々な低炭素技術の組み合わせが必要だ。そして原子力もその一翼を担い、将来の電力網で共存することが可能だと考えている。若い世代の多くの技術者たちは原子力があってこそ環境にも貢献できるという考えを共有しており、スピード感を持って取り組んでいきたいと思っている。
トランスアトミックの実際の商用原子炉施設では、典型的な原子炉にある大型格納容器などは必要なく、建築に自由度があるので、人々が原子炉に抱く拒否感を払拭するような新しい受け止め方のできるものにしたいと楽しみにしている。
続いて4人のパネリストが、自己紹介を含めてなぜ原子力が必要なのかを語るショートプレゼンテーションを行った。
◎<英国>ネイサン・パターソン/欧州原子力学会若手ネットワーク共同議長/英ロールスロイス社顧客アカウントマネージャー

◎<日本>佐々木孔英/日本原子力研究開発機構高速増殖原型炉もんじゅプラント保全部燃料環境課

◎<サウジアラビア>アルオウェシィール・アズハール/早稲田大学先進理工学研究科ナノ理工学専攻

◎<マレーシア>マイラ・リヤナ・ラザリ/マレーシア原子力発電公社(MNPC)ステークホルダー・エンゲージメント担当マネージャー

その後、堀尾健太日本原子力学会若手連絡会副会長をモデレーターに迎え、4人にデワン氏を交えたパネルディスカッションが行われた。
デワン:米国では、気候変動問題やPM2.5(粒子状物質)による大気汚染問題の解決につながる低炭素なベースロード電源として、原子力発電が注目されている。原子力に環境への貢献というワクワクする要素が加わったことで専攻する学生が増え、約1世代にわたる原子力技術者の空白を取り戻せる。原子力分野で起業したことは、新しい技術の開発とともに規制や政策立案などについても学んでいける豊かな面があり、本当に良い選択をしたと感じている。
パターソン:英国では、環境性や経済性とともに電力セキュリティ面でも原子力発電を支持している。イノベーションによる新しい技術は、新設炉ばかりでなく既存炉に対しても高経年化対策などに応用できる。過去の事例を分析し運転経験を踏まえ、原子力安全を高い水準で保持した上で、原子力産業界でもこうした新技術を早く導入していけるような適正な投資および規制の適正化が大切だと考える。次のプラットフォームは何かを見据え、できるだけ多くの人と意見を交わしながら、技術開発を進めていきたい。
佐々木:日本で何が足りないかを考えた時、自分の専門である材料工学分野で貢献するにはエネルギー自給率を補える高速炉技術だと考えた。原子力委員会が誕生した1956年の原子力長期計画では「増殖型動力炉がわが国の国情に最も適合する」とされており、日本における高速増殖炉の重要性はこの頃から少しも変わっていないと思っている。私が就職したのは福島第一原子力発電所事故の後だが、これまで学んできたことを還元したいと考え、原子力界を良いものにしていきたいという決意をさらに強めている。
アズハール:サウジアラビアではまだ原子力についてよく知られていないので、国内での周知を図っていきたい。現在では石油が採掘できるが、これが実際に枯渇してしまった後の社会がどうなってしまうのか国民が想像をめぐらせてみることが必要だ。原子力発電の抱える問題点については解決策を求めていくべきで、すぐに諦めないほうがよいと思う。日本の原子力技術を是非サウジアラビアへ持って帰りたい。
ラザリ:マレーシアでも環境が主要なトレンドとなっており、停電のない社会は若い人へ引き継ぐ財産として重要とされている。原子力に関する協議は原子力庁だけでなく他のステークホルダーも巻き込んでポジティブに発信していこうという取り組みが行われている。同時に原子力のリスクについてもしっかり言及し、市民が国にとって何が大事か自ら考え判断していけるようにして信頼醸成を図っていこうとしている。
最後に、堀尾氏は「研究者として継続性や変わらないものを大切にしつつも、将来に責任を持つ若手としては社会の進歩や技術の進化に対してポジティブな姿勢でありたい」と所感を述べ、今後も若手による議論を続けていくことに意欲を示した。

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