原子力機構、日立GE、スギノマシン、福島第一燃料デブリ取り出しに向け新技術を開発

 日本原子力研究開発機構、日立GEニュークリア・エナジー、スギノマシンは4月27日、福島第一原子力発電所の廃炉作業における炉内構造物や燃料デブリの取り出しに適用が期待される新たな「はつり除去技術」を開発したと発表した。スギノマシンの強みとするウォータージェット切断と、機器類の小型化を図れるレーザー加工法の両技術を組み合わせたもので、約2年間にわたる3者共同実証試験を通じて、金属構造材や燃料デブリなどを想定し、表面から連続的に削り取っていく「はつり除去加工」としての有用性を確認した。
 ウォータージェット切断は、小径ノズル(直径0.1mm)から噴出する超高圧水(2,000~4,000気圧)を対象物に衝突させ切断するもので、水流による冷却性の高さから熱影響が小さく、加工に伴う粉塵を水が取り込むことで周囲を汚染させない利点があり、コンクリート構造物や航空機の機体の解体などに利用されている。切断加工能力を高めるためウォータージェットに研磨剤を混ぜて噴射する「アブレシブジェット切断加工」もあり、スギノマシンと日立GEとによる炉内構造物切断を想定した研究開発も行われている。
 また、レーザー加工法は、レーザー光の照射によって対象物を加熱溶融し、その部分をガスジェットで吹き飛ばすことで切断するもので、対象物に加わる力が小さいことなどから、機器類の小型化が可能となり、福島第一原子力発電所の廃炉現場のような狭あい空間にも様々な遠隔装置を組み合わせることができる。
 両技術の組み合わせによる加工性向上を確認する基礎試験で、繰り返して断続的に噴射されるウォータージェット(パルスウォータージェット)を用いると、レーザー照射により生じた溶融部が試料(ステンレス鋼)に付着しないだけでなく、除去性能も高まることが示された。これを受け、形状が明らかでない炉内構造物や燃料デブリの除去に有力とされる「はつり除去加工」に、レーザー光とパルスウォータージェットを組み合わせた方式の有用性が確認され、今後、共同研究グループでは、燃料デブリ模擬試験体での実証、現場適用に向けて、除去性能の向上、粉塵の回収などが課題だとしている。
 東京電力の福島第一廃止措置中長期ロードマップでは、今夏を目途に号機ごとの燃料デブリ取り出し方針を決定するとしており、これを目指し、1、2号機では原子炉格納容器内への自走式装置導入が行われているほか、3号機でも宇宙線ミュオンを用いた炉内測定調査が5月上旬にも開始するところだ。