水産白書公表、震災後の漁獲高回復状況「着実な取組が福島県漁業の本格再開に」

 水産庁は6月2日に2016年度水産白書を公表した。その中で、東日本大震災からの水産業復旧状況について、2016年2月~17年1月の岩手県、宮城県、福島県の主要な水産物産地卸売市場への水揚量は、震災前の2010年3月~11年2月と比べ70%に、水揚金額で90%となったとしている。このうち、福島県については、震災前と比べ、水揚量で75%、水揚金額で55%だった。
 福島第一原子力発電所事故に伴う影響で、福島県水産物の放射性物質モニタリング検査結果について、基準値を超えるものは、海産種で2014年10~12月期以降なく、淡水種でも2016年度には7検体のみだったとしている。
 また、漁業の本格再開に向けて福島県沖で実施されている試験操業で、2017年3月末時点、対象海域が発電所から半径10km圏内を除く全域にまで拡大し、対象魚種も当初の3魚種から97魚種に、漁獲量も2012年の122トンから2016年には2,100トンに増加しており、「着実な取組が福島県の漁業の本格再開につながっていく」と期待を寄せている。
 さらに、事故直後に水産物について輸入規制を講じていた53か国・地域のうち、2017年3月末までに20か国で規制が完全撤廃されたことを述べ、国内の風評対策とともに、海外に向けても、外国語で検査結果を公表するなど、適切な情報提供を行う必要性を述べている。
 震災復興関連の事例を紹介するコラムでは、震災前には全国第3位の漁獲量を誇っていた福島県産「常磐もの」ヒラメの試験操業・販売開始や、宮城県気仙沼市の漁業協議会青年部によるカキ養殖を題材とした小学校学習支援活動などが取り上げられている。