クニミネ工業 ベントナイトで放射性廃棄物処分など多様な分野で循環社会に貢献

2017年6月26日

特集のロゴ(仮) 1943年創業のクニミネ工業は、日本でも有数の高品質なベントナイト製品の製造や販売を行っている。ベントナイトは、膨潤性、遮水性、自己修復性などの特性が注目されており、放射性廃棄物処分の充填材や緩衝材の候補材料となっている。同社黒磯研究所でベントナイトの多様な用途に大きな可能性を見出す2氏に話を伺った。

新野正明黒磯研究所所長=写真右
諸留章二氏(理学博士)=写真左

<膨潤性や吸着性などの特性から千の用途を持つベントナイト>
 ベントナイトは、粘土鉱物であるモンモリロナイトを主成分とし、これに夾雑物が混じった岩石で、水を吸って膨れる「膨潤性」、水分によって粘りを持つ「増粘性」、各種の陽イオンなどを取り込む「吸着性」など、様々な特性を持つ。まるで生き物であるかのように、水を吸うと膨らんで乾燥すると萎むというのを半永久的に繰り返す。クニミネ工業のベントナイトの生成については諸説あるが、おおよそ一千万年前に噴火した火山灰が堆積し、長い時間をかけて変質しながら鉱床ができたとされている。
 ベントナイトは世界各国で採掘でき、米国、中国、インド、オーストラリア、欧州などが主な産出国となっている。日本でも採掘されており、クニミネ工業グループでは、山形、宮城、新潟に所有するベントナイト鉱山から採掘を行って、天産物として乾燥・粉砕して提供するほか、併設工場などで加工してモンモリロナイトを抽出するなどして製品を提供している。弊社は、ベントナイトの日本国内トップメーカーとして、各分野製品を豊富に取り揃え、特に化成品分野では人工製品、天然製品ともに多くの種類を取り扱っている。
 「ベントナイトは千の用途を持つ粘土」と言われるほど多岐にわたる。ベントナイトは主に、膨潤性に優れる「Na(ナトリウム)型ベントナイト」、吸水性速度に優れる「Ca(カルシウム)型ベントナイト」、そしてCa型に炭酸ナトリウムを人工的に加えてイオン交換を起こさせることでNa型に近い性状にした「活性化ベントナイト」の3種類に大別でき、それぞれの特性を活かした用途に使用される。また、水分量によって形状が変わるので、流動性のある液体にすることも、歯磨き粉のような固さのペースト状にすることも、さらに団子状に固められるようにすることもでき、水分を調整することで取り扱いやすくすることが可能だ。
 クニミネ工業のベントナイト製品は身近な生活環境の中でも広く使用されている。弊社の営業分野としては、放射性廃棄物処分関連を含む環境分野、建物基礎部分掘削工事の安定液など土木建築基礎分野、自動車のエンジンブロック鋳型粘結材など鋳物分野、猫用トイレ砂などペット関連分野、農薬粒剤の加工受託などのアグリ分野、化粧品や塗料など化成品分野などがある。人間にも無害である。
 
<ベントナイトの特性は放射性廃棄物地層処分のバリア材に最適>
 放射性廃棄物用途としては、地層処分する際のバリア材として検討が行われている。ベントナイトに陽イオン性の放射能の原子が付着すると、中の放射性核種が外に出ようとする動きを抑えるとともに外から侵入してくる水も止め、放射性核種をほぼ吸着できる。ベントナイト粉末と砂を混ぜた状態にしてローラーで遮水層を作ると、透水係数が非常に低く水をほぼ通さない層ができる。福島第一原子力発電所事故後は、この特性にさらに注目が集まり、除染時の仮保管などに使われているほか、中間貯蔵施設に使用される可能性もある。
 ベントナイトは一千万年ほど変質せず安定して存在しており、放射性廃棄物の放射能が低減するまでの長期間でも耐えられる材料だと言える。時を経るとセメント等の場合はヒビ(クラック)が入ったり、有機物の場合は消滅したりしてしまう。産業廃棄物処分場などではベントナイト使用の代替法に遮水シートも使われるが、破れた場合は漏れてしまう。ベントナイトと砂を混ぜた遮水層なら、何かの衝撃で亀裂が発生しても、水によってまた一体化する自己修復性(地盤追従性)を持っており、外に漏れ出すことはない。放射性廃棄物分野でのベントナイト利用については、日本原子力研究開発機構(JAEA)や大学など様々な研究機関と共同で研究を続けてきている。
 高レベル放射性廃棄物の最終処分場が決定して実際に建設が始まった場合には、緩衝材として相当量のベントナイトが長期間にわたって使用されることになるので、それに備えなければならない。弊社グループの鉱山からは、ほぼ無尽蔵にベントナイトが採掘でき、周辺にはまだ採掘していない鉱床もある。しかし現在の生産量を大きく上回る場合には、在庫管理や採掘から生産までのシステムなどを全て見直し、対応するための設備投資も必要となってくる。なるべく早くそれぞれの条件を決めていただき重要かつ確実な情報を提供していただければ、スムーズに量産できるようになる。遠すぎない将来に具体的な放射性廃棄物最終処分場計画が発表されることを期待しつつ、弊社のベントナイトが核燃料サイクルや原子力発電所の廃炉などを含む循環型社会の実現に貢献できる日を待ち望んでいる。

<所有鉱山からクニゲルV1など高品質なベントナイト採掘>
 クニミネ工業グループ所有の5つの鉱山からは、世界的に見ても高品質なベントナイトの原鉱石が採掘されている。特に山形県にある月布鉱山から採れた「クニゲルV1」という製品は大変長寿命であり、これが日本のベントナイトの代表サンプルとして、国の機関や大学で長年にわたり軸として研究されている。ベントナイト自体を顕微鏡で見てみると板状の結晶が寄り集まっており、その周りに陽イオンが付着する。クニゲルは板状粒子が大きいので板の重なり部分も大きく、より水が迂回していくため、効果的に特性を発揮することができる。

露天採掘の様子

坑内採掘の様子

 ベントナイト鉱山の採掘方法には、生成条件などにより、地中に坑道を掘りながら地下に潜って掘る「坑内掘り」と、地表から近い表層を剥す「露天掘り」がある。弊社グループの山形の鉱山は前者、宮城や新潟の鉱山は後者で採掘している。ベントナイトの原鉱石は産地や銘柄によって、グレー、白、やや黄色みがかった灰色など色が違い、品質にも差がある。ベントナイトを扱う研究機関からは、鉱床の様子や保存状況などを見てみたいという要望があり、多数の方々に見学に来ていただいている。坑内掘りの見学では車に乗って坑内に入るが、真っ暗でアリの巣のような中を進んでいくのでどこを走っているか全然わからず、まるで異空間のような体験だ。弊社グループの鉱山は一般には公開していないが、ベントナイトそのものや製品、またクニミネ工業を知ってもらえる機会でもあるので、原子力業界からの見学も歓迎している(お問い合わせは同社環境建設課松戸氏まで/matsudo@kunimin.co.jp)。