「原子力利用に関する基本的考え方」閣議決定

2017年7月21日

「原子力利用に関する基本的考え方」委員会決定

 政府は7月21日、今後の原子力政策の羅針盤として原子力委員会がまとめた「原子力利用に関する基本的考え方」を閣議決定した。同委員会では「基本的考え方」の策定にあたり、2015年より有識者ヒアリングを行い意見交換した上で、2017年4月に「考え方」案を取りまとめた。これに対し国民から寄せられた728件の意見について7月18日に同委員会で議論を行い、今回の最終案として20日に決定した。同委員会が政策の大方針をまとめるのは2005年の「原子力政策大綱」以来で、原子力を取り巻く環境変化も踏まえ今後5年ごとに見直すこととしている。
 「基本的考え方」ではまず基本目標として、責任ある体制のもと徹底したリスク管理を行った上での適切な原子力利用が必要であるとし、平和利用を旨として、安全性の確保を大前提に国民からの信頼を得ながら、原子力技術が環境や国民生活及び経済にもたらす便益とコストについて十分に意識することが大切だと明記。これを踏まえた上での重点的取り組みとして、(1)ゼロリスクはないとの認識の下での不断の安全性向上、(2)地球温暖化問題や国民生活・経済への影響を踏まえた原子力エネルギー利用、(3)国際潮流を踏まえた国内外での取り組み、(4)平和利用と核不拡散・核セキュリティの確保、(5)原子力利用の前提となる国民からの信頼回復、(6)廃止措置及び放射性廃棄物への対応、(7)放射線・放射性同位元素の利用の展開(8)原子力利用の基盤強化――を挙げ、それぞれ方向性を示している。
 岡芳明原子力委員長は20日の委員会決定後ブリーフィングで、「基本的考え方」に盛り込まれた内容をどのように具現化していくかについて、閣議決定により各省庁が「基本的考え方」を尊重して責任を持って取り組んでいくとともに、同委員会としても軽水炉長期利用や放射線利用など各分野関係機関の連携強化に向けて情報交換の場となるプラットフォームを作って進めていくとした。また、原子力発電所の再稼働にあたっては、米国が自主的安全性向上および規制の改善を進めた結果、原子力発電の安全性と経済性を両立させた事例を参考にしていくことを強く求めた。
 同委員会事務局によると「核不拡散に対する方針など海外に向けた発信も重要」であるとして、現在英語版の作成も進めている。