福島第一廃炉で新たな技術戦略プラン案、燃料デブリ取り出しの方向性も

 福島第一原子力発電所廃炉における燃料デブリ取り出し方法に関する評価が7月31日、原子力損害賠償・廃炉等支援機構より示された。同日、福島県内で開かれた政府、自治体らによる評議会で、同機構の山名元理事長が新たな技術戦略プラン案として説明したもの。
 技術戦略プランは、政府と東京電力が策定する福島第一廃炉の中長期ロードマップを実行するために必要な技術的根拠となるもので、前回2016年7月の公表から、これまでのPCV内部調査状況などの進展を踏まえ、近く改定となる運びだ。山名氏は説明の中でまず、「福島第一の廃炉は大きな不確実性を内在したプロジェクト」、「ある程度の不確実性は存在していても、安全性の確保を最優先に、これまでの経験・知見等を活用し柔軟かつ迅速に取り組む」との基本的姿勢に立ち、引き続き、「安全」、「確実」、「合理的」、「迅速」、「現場指向」を基本に据えて取り組んでいく考えを示した。
 燃料デブリに関して、山名氏は、1~3号機それぞれ、原子炉格納容器(PCV)底部のペデスタル(原子炉圧力容器下)内側について、「床面に大部分の燃料デブリが存在」、「少量の燃料デブリが存在」、「床面に2号機と比較して多くの燃料デブリが存在」などと、号機ごとの違いを述べた。その上で、「現在、原子炉内部の状況が完全に把握できているわけではないが、炉心溶融過程のシミュレーション計算、宇宙線ミュオンによる観測などを総合的に利用することで、最も確からしいと思われる炉内状況を推測し、取り出しの可能性を検討することが可能」として、燃料デブリ取り出し工法の実現性評価について説明した。それによると、2016年公表の技術戦略プランで重点的に取り組むべき工法としてあげられた「冠水-上アクセス工法」、「気中-上アクセス工法」、「気中-横アクセス工法」のそれぞれについて、主に水位とアクセスルートをポイントに総合評価した結果、これまでの知見蓄積、燃料デブリ到達までの期間などから、「最初にPCV底部にある燃料デブリを横アクセスにより取り出すことが現実的」とされている。
 この他、新たな技術戦略プラン案として、山名氏は、廃棄物対策、研究開発推進、国際連携の強化について述べた上で、今後、燃料デブリ取り出しなど、技術的難度の高い取組が本格化していく中、プロジェクトマネジメントの重要性を強調するなどした。