エネ庁が基本政策分科会を1年半ぶり開催、エネルギー基本計画の見直しが始まる

2017年8月10日

 資源エネルギー庁は8月9日、エネルギー基本計画の見直しに関する議論を開始した。現行のエネルギー基本計画は、2014年の策定から3年を経過しており、エネルギー政策基本法で定める見直しの時期にあり、2030年度を見据えた「長期エネルギー需給見通し」も2015年7月の策定から2年が過ぎたところだ。
 同日、1年半ぶりに開かれた総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=坂根正弘・小松製作所相談役、=写真)の冒頭、世耕弘成経済産業大臣は、「計画の骨格を変える段階にはない」とする一方、東日本大震災から6年間のエネルギーを巡る状況変化を振り返り、「30年目標を着実に実施するために何をすべきか」と述べ、新たなエネルギー政策の検討に向け、活発な議論がなされることを期待した。2016年には、将来の温室効果ガス排出削減に向けた国際枠組み「パリ協定」を踏まえ、「2050年までに80%の温室効果ガス排出削減」を目指す地球温暖化対策計画が策定されているが、基本政策分科会の議論と連携し、あらゆる選択肢の追求を視野に幅広い意見を集約すべく経産相主催の「エネルギー情勢懇談会」が8月30日に始動することとなっている。いずれの会合も年度内を目処に議論を取りまとめる見通しだ。
 9日の基本政策分科会では、議論に先立ち資源エネルギー庁が、2030年度の「長期エネルギー需給見通し」実現に向けた主要課題を、(1)福島復興、(2)再生可能エネルギー、(3)省エネルギー、(4)原子力、(5)資源・火力、(6)横断的課題(電力システム改革など)――に整理した。原子力については、再稼働によるコストとCO2抑制への貢献が動き出す一方で、社会的信頼の回復が最大の課題だとしている。
 これを受け、前回のエネルギー基本計画見直しにも参画していた橘川武郎委員(東京理科大学イノベーション研究科教授)は、原子力発電所の再稼働が進まぬ状況を憂慮し、「依存度低減の一方でリプレースの議論もすべき」などと述べた。さらに、立地地域の立場から、西川一誠委員(福井県知事)は、「もんじゅ」の廃炉、使用済み燃料貯蔵のひっ迫など、核燃料サイクル政策の停滞について触れた上で、「こうした問題が絶えぬようでは計画とはならない。長期的スパンで腰を据えた議論を」と訴えかけた。
 また、山口彰委員(東京大学大学院工学系研究科教授)は、原子力の安全性向上、研究基盤・人材確保、損害賠償制度などの審議に参画してきた経験から、「予見性」の問題をあげた上で、将来の不確実さに備えたオプションが新たなエネルギー基本計画に明記される必要性を強調した。「長期エネルギー需給見通し」の進捗に関しては、秋元圭吾委員(地球環境産業技術研究機構システム研究グループリーダー)が、省エネ定着の一方、エネルギー多消費型産業の衰退を懸念し、新計画が「バランスよく柔軟性を持った戦略」となることを求めた。これに対し、メーカーの立場から、水本伸子委員(IHI常務執行役員)は、技術・人材を維持するため、原子力発電所の新増設のオプションを残しておくことなどを訴えた。
 消費者の視点からは、崎田裕子委員(ジャーナリスト)が高レベル放射性廃棄物処分に関する対話活動の経験から情報発信の重要性を述べ、辰巳菊子委員(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問)が福島被災地を視察した経験から原子力利用に慎重な姿勢を示すなどした。
 委員からの意見を踏まえ、「長期エネルギー需給見通し」の議論をリードした坂根分科会長は、改めて省エネルギーの重要性を強調した上で、「化石燃料が無くなったら再エネでやっていけるのか。新増設の前に、なぜ今ある原子力発電所が再稼働できないのか」として、今後さらに議論を深めていく考えを述べた。

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