「核兵器用核分裂物質生産禁止条約」発効に向け25か国の専門家準備グループ会合が初開催

2017年8月16日

 核兵器用の核分裂性物質(高濃縮ウランおよびプルトニウム等)の生産を禁止することで、新たな核兵器国の出現防止と、核兵器国による核兵器の生産を制限することを目指す「核兵器用核分裂物質生産禁止条約」(FMCT、通称カットオフ条約)の発効に向け交渉を促す専門家準備グループの初会合が7月31日~8月11日、スイス・ジュネーブで行われた。同グループは、地理的衡平性に基づき選ばれた25か国で構成され、今次会合には日本から佐野利男外務省参与(前軍縮代表部大使)が出席した。
 FMCTは、包括的核実験禁止条約(CTBT)や部分的核実験禁止条約(PTBT)とともに、核軍縮を目指す取組の一つで、1993年9月にクリントン米国大統領(当時)が国連総会演説で提案したものだが、交渉開始に向けた調整をジュネーブ軍縮会議で進めることとしているものの、具体化の動きがなく未だ発効の見通しが立っていない。このような状況を受け、2016年の国連総会で、国連事務総長の下、2年間かけて将来のFMCT交渉に資するようハイレベル専門家準備グループを設置することが決定した。同グループは、2018年の次回会合で報告書を作成し、報告書は同年の国連総会への提出とともに、ジュネーブ軍縮会議でも検討が求められることとなる。
 今回の専門家準備グループ会合では、意思決定機関や検証実施機関などを含む組織のあり方、条約の発効を規定する法的事項、透明性・信頼性醸成措置といった多岐にわたる論点について、検討および議論が行われた。
 日本はこれまでも、二国間協議やジュネーブ軍縮会議への作業文書提出など、FMCTの交渉開始に向けた取組を進めており、2月に国連事務総長より専門家準備グループのメンバーに選ばれた際も、「核軍縮を進める上での現実的かつ実践的措置の一つとして重視」との考えから、積極的な貢献を図る姿勢を示している。
 なお、2009年4月に、オバマ前米国大統領は、プラハにおける「核兵器のない世界」に関する演説の中で、CTBT批准の追求とともに、FMCT交渉開始への意思を表明している。