規制委員会、更田委員長の新体制が始動「初心を忘れず」

2017年9月25日

 原子力規制委員会の新委員長に9月22日、更田豊志委員長代理が就任した。合わせて、山中伸介・大阪大学大学院工学系研究科教授が委員に就任し、同日行われた臨時会議で、委員長代理として田中知委員が指名された。

更田委員長

 会議後、記者会見に臨んだ更田委員長はまず「委員が替わっても福島に対する思いを持ち続けることが重要。安全の追求に終わりはない。慢心せず常に自らに問いかけ最善を尽くす所存」と述べ、福島第一原子力発電所事故の教訓を肝に命じ、職務を当たる考えを強調した。規制委員会が発足した2012年9月に委員に就任した更田委員長は、今後の抱負について記者から問われると、「最初の5年間にはない難しさが2つ目の5年間にはあるだろう。人間はどうしても忘れやすい。初心を忘れず、発足時の気持ちを持ち続けること」などと、今後5年間のリーダーシップ発揮に向けての気構えを述べた。また、当面の重要課題として、更田委員長は、検査制度の改善をあげ、「これは大きなチャレンジ」として、検査を受ける側のチェック機能とともに、規制側の技量を向上させていく必要性を強調した。
 福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策に関しては、特に周辺自治体首長との面会を近いうちに行う意向を示した上で、「住民の方々に再び避難を願うような事態にはならないだろう。一方で、環境汚染に懸念があるのは事実。説明するということは難しい」などと、これまで福島第一廃炉の専門家検討会をリードしてきた経験を踏まえ、情報の伝え方についても十分考慮する必要性を示唆した。
 また、現在大詰めを迎えている柏崎刈羽原子力発電所の新規制基準適合性審査を巡り、東京電力の「原子炉設置者としての適格性」について問われると、更田委員長は、「感情で規制を行っているわけではない」と断った上で、「福島第一の廃炉作業を通じてよい面も出てきた。かつての東電にはなかった真剣さが感じられる」などと、同社の事故に対する反省、技術力、マイプラント意識に一定の評価を示した。
 さらに、新検査制度の導入に向け、「事業者とのコミュニケーションをどのようにとっていくか」などと、今後対処すべき課題への認識を示した更田委員長は、事業者側に対し求めることについて問われると、「施設について一番よく知っているのは事業者自身。自らの施設の安全性に誇りを持って『一人称』で語ることだ」と強調した。

山中委員

 続いて記者会見に臨んだ山中委員は、「自らが取り組んできた研究や人材育成の経験を踏まえ、原子力の安全に貢献したい。自身の活動が少しでも福島の復興に寄与できるよう、日本が国際的に信頼されるよう最善を尽くしていきたい」などと抱負を述べた。原子炉工学が専門の山中委員は、これまで更田委員長が担当してきたプラント関係の審査と検査制度の見直しを担う。任期は、更田委員長の委員としての残任期間で3年間となる。
 これに先立って9月20日、田中俊一前委員長は、最後の定例記者会見を行い、これまでライブ配信で公開されてきた240回に上る会見を振り返り、「よい緊張感だった。発足当初は、独立性と透明性を保とうとするということだった。皆様に色々と関心を持ってもらうことが、今の規制委員会の姿を作ったと思う」などと、記者団に対し謝意を述べた。