今冬の電力需給見通しを公表、安定供給に要する3%以上の予備率確保

2017年10月25日

 資源エネルギー庁は10月24日、今冬の電力需給見通しを公表した。それによると、10年に1回程度の厳寒を想定しても、エリア間の市場取引なども考慮すれば、全国的に電力の安定供給に最低限必要とされる3%以上の予備率を確保できる見込みで、今夏に引き続き特別の節電要請は実施しない方針となった。
 今夏同様、最大需要量を厳しめに算定する一方、各電源の供給力は、確実に見込めることを前提に十分精査した上で最大限の想定値とした。全国レベルでみると、原子力発電については、既に再稼働しているプラントのみを計上し350万kWを見込んでいる。現在、運転中の原子力発電プラントは、関西電力高浜3、4号機(PWR、各87万kW)、九州電力川内1、2号機(PWR、各89万kW)の4基で、2016年に再稼働し10月3日に定期検査に伴い停止している四国電力伊方3号機(PWR、89万kW)は、2018年1月に送電開始予定となっている。火力発電については、12,820万kW(1月)を見込んでおり、その中には、昨冬にも供給力となった1972年運転開始の東北電力東新潟港1号機(LNG、34万kW)も含まれている。同機は、1月にボイラーからタービンにつながる蒸気管溶接部にひび割れが確認され発電を停止したが、当該箇所の配管取替え・修理を実施し7月に運転を再開している。
 また、今冬においても、電力需要がピークとなる北海道エリアについては、(1)他エリアからの電力融通に制約がある、(2)発電所1基の計画外停止が予備率に与える影響が大きい、(3)厳寒により電力需給のひっ迫が生命や安全に及ぼす影響が甚大である――ことから、計画外停止の過去最大級のリスクにも対応できることを追加で確認している。
 東日本大震災を契機とした電力需給ひっ迫は、省エネの推進、原子力発電所の再稼働などにより、昨夏以降、節電要請の必要なレベルには至っていないが、電源構成に占める火力発電比率は、震災前2010年度の65%から2016年度には約83%に増加し、火力依存度が高止まりしている状況だ。原子力発電停止分の発電量を火力発電の焚き増しにより代替しているとすると、2016年度の燃料費増加分は約1.3兆円で、国民1人当たり約1万円の負担増、震災以降の累積では燃料費増が合計約15.5兆円、国民1人当たり約12万円の負担増と試算されている。さらに、火力発電に伴う電力由来のCO2排出量も、近年低下傾向に転じているものの依然高い水準にある。