食品の安全・安心でシンポ、消費者の理解や放射性物質検査の意義など議論

 食品中の放射性物質に関する現状と取組について考えるシンポジウム(消費者庁他共催)が10月27日、都内で開かれ、農産物が収穫を迎える時期に際し、風評被害払拭に向け取り組む生産現場や流通業界、消費者団体の人たちが意見を交わし合った。本シンポジウムは、東京を皮切りに、11月にかけて、仙台、名古屋、福岡と、大消費地を中心に開催される予定。
 シンポジウムではまず、消費者庁が、2013年から継続実施している「風評被害に関する消費者意識の実態調査」について紹介し、2017年8月の10回目の調査結果では、「食品中の放射性物質を理由に購入をためらう産地」をあげている人は、どの地域とも、これまでで最も低い比率となったことを示した(=表)。一方で、「食品中の放射性物質の検査が行われていることを知らない」と回答した人は37.5%と、これまでで最も高くなり、6回目の調査(2015年8月)から35%前後で推移している状況だ。(「風評被害に関する消費者意識の実態調査」の結果詳細については こちら
 これに対し、全国地域婦人団体連絡協議会幹事の夏目智子氏が、「同じ情報でも消費者により理解の度合いは異なる」などと述べたほか、検査で安全性が確認されているにもかかわらず、福島県産の購入をためらう人が他県産より依然として多いことをあげ、「消費者が正しい情報を見極める力を持つべき」と訴えた。
 さらに、全国に小売り店舗を展開するイオングループの執行役・三宅香氏は、ゲルマニウム半導体検出器による精密な検査を独自に継続しているものの、利用客からは食品関連の意見が少なからず寄せられている現状から、「必ずしもお客様の安心につながっていない」として、商品に対する安全・安心を担保すべく「一つずつ地道に納得してもらえるよう努めていく」と強調した。
 また、シンポジウムに先立って参加者から寄せられた意見では、「検査を行っている事実だけが重視されている」という声もあり、これに関連し、福島県立医科大学附属病院助教の佐藤久志氏が、健康診断を例に「検査をするメリット」を説明する必要性などを指摘した。一方で、福島県矢祭町で農業法人「でんぱた」を設立し、地元農産物の国内外売り込みに取り組んでいる鈴木正美氏は、「6年間も検査を続けないと信用されないのか。現場に出向いて自分を信用してもらうしかないのでは」などと、厳しい現状を憂慮した。
 会場参加者から市場の取組状況に関する質問・意見があったのに対し、佐藤氏は「生産者の話が一番リアリティがある」、三宅氏は「海外でも福島産の果物を売る『ジャパンフェア』を開催している」と、「農業王国ふくしま」のブランド復活にエールを送った。