UNSCEAR白書 福島は全般的に線量低く関連リスク低いとする前報告書改めて確認

2017年11月7日

堀井政務官に白書を手交するクリックUNSCEAR事務局長ⓒ外務省

 原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)のM.クリック事務局長は10月27日、堀井学外務大臣政務官を表敬し、福島第一原子力発電所事故による被ばく線量を推計して健康リスクを評価した「2013年報告書」刊行後の進展をまとめた「2017年白書」を手交した。堀井政務官は、UNSCEARの同報告書およびその後の取り組みについて、国連の機関による科学的で中立的な評価として重視していると述べた。UNSCEARは10月29日、同報告書・白書についての講演を福島県いわき市で開催している。
 UNSCEARが2014年4月に刊行した「2013年報告書」は、福島県においてはチェルノブイリ原子力発電所事故後に観察されたような多数の放射線誘発性甲状腺がんの発生を考慮に入れる必要はないとし、放射線による乳がん、小児白血病または他の小児がんの発生率の上昇が識別可能なレベルになるとは予測しておらず、短期間における原子力事故の最も重大かつ顕著な健康影響は、精神衛生や社会福祉に関するものであったとの考えを示している。UNSCEARは同報告書公表後も継続してフォローアップを行ってきた。
 今回「2017年白書」では、2016年末までに利用可能となっていたさらなる情報の特定を続け、2013年報告書への影響を評価するために、関連する新規文献のレビューを体系的に実施。これらの新規文献の大部分は、2013年報告書の主な仮定および知見を改めて確認するもので、同報告書の主要な知見に実質的に影響をおよぼしたり、主な仮定に異議を唱えたりする文献はなかったとまとめている。UNSCEARでは、資料のレビューに基づき、現時点で2013年報告書の評価や結論に何ら変更を加える必要はないと判断。一方で他のいくつかの文献については、さらなる解析や研究の追加によって、より確実な証拠を得ることが必要であるとしている。
 なお、2016年に「18歳未満の甲状腺がん発症率が福島県では日本全国平均と比べ約20~50倍高かった」とする論文が発表されたことに関し、高感度超音波検診の影響への考慮が不十分であるなど、調査の計画と方法についてあまりにも偏りが生じやすいものとして、今回の白書では「重大な欠陥があることが判明した」と述べている。さらに、超音波による感度の高い甲状腺検査による過剰診断や小さな甲状腺がんへの積極的な治療に対する懸念について触れ、「甲状腺スクリーニングは複雑な問題であり、福島第一原発事故後において、スクリーニングの範囲、性質、そして継続を判断するためには、純粋な科学的課題の範疇を超える要素(社会経済的要素、公衆衛生、法律、倫理、人権に関するものなど)を考慮する必要がある」としている。
 一方、10月23日に開催された第28回「県民健康調査」検討委員会では、鈴木元国際医療福祉大学クリニック院長が、新たな情報を取り込んで福島県内の1歳児の外部被ばくおよび内部被ばくからの甲状腺等価線量の平均値を再評価した結果、全ての地域で40mSv未満であり、2013年のUNSCEAR報告書の7~69%の値となったことを報告。今後さらにデータの不確実性を低減して2018年度に線量再評価をまとめる。